「自己主張が苦手な子どもには成功体験で小さな自信の積み重ねを」
子どもが「自己主張が苦手」ということについて心配をしている親の話をよく聞きます。ハキハキと自分の考えを発表するような人に育って欲しいという親の思いを受けてのことでしょう。
ハキハキと自分の考えを伝えられるような子どもばかりが良いという訳ではありません。今回「自己主張が苦手な子ども」についてまとめました。
全ての面で自己主張が苦手な訳ではないことが多い
小学校の教員をしている頃、「うちの子どもは自己主張が苦手で…」という相談を受けることが度々ありました。
私は学級担任として、その子どもの学校での普段の様子を見ていたので、色々と感じていることがありました。
多くの親が「自己主張が苦手で…」と言っているのは、授業中に率先して手をあげて発言をしたり、話し合いの時に自分の意見をハキハキと言ったりすることがあまり得意でないことを指していることが多いということです。
長く子どもと接してきて感じていることは、基本的には「自己主張が苦手でも大丈夫」だということです。
親が我が子のことを心配になる気持ちはわかりますが、あまり心配し過ぎないで欲しいです。親があまり心配をするとそのことが却って変な形で子どもの負担になってしまうケースもあります。
授業参観の際に率先して手をあげ、色々な意見を発表していくようなタイプの子どもは、とても目立ちます。
親としてはそのようなタイプの子どもを良いモデルとして捉えることが多いようです。ただそういったタイプ以外にも自分の思いを表出する方法がいくつもあります。
口に出して伝えることが苦手であっても、文章に書いて伝えることは得意な場合があります。また、教師に質問に対し、すぐに手をあげ答えるタイプの子どもは、反応のスピードは良いのですが、深い思考を必要とするものなどは苦手であることがあります。
じっくりと深く物事を考えるタイプの子どもは、学校のクラスで「ハイハイ」と手をあげて答えることは少ないということです。
小さな「決断」をさせる機会を多く持つと良い
私は、自己主張が苦手な子どもに対して、小学校のクラスにおいて、色々な小さな「決断」をさせるようにしていました。
「決断」と言っても大袈裟なことではなく、非常にシンプルな身近なことです。「選択」という言葉で言い換えられるようなものです。例えば、折り紙を配る際、希望の色を聞き、自分で色を選ばせること、給食でおかわりをする際、どの位の量が良いのかを自分で決めさせることなどです。
こういった日常生活での小さな「決断」にたくさん取り組んでいくことで、子どもは自分の思いを外に出していくことに慣れていきます。家庭において、親が子どもの自己決定・自己表出について意識しないでいると、様々な場合で親のペースで物事が進んでいってしまうことが多いです。
例えば、子どもが何かを探しているような時、親はその雰囲気で何を探しているのかが分かるものです。
そんな時に「〇〇を探しているのでしょ。〇〇は引き出しの三段目にあるよ。」と言いたくなります。特に忙しい時間帯などはそういったやり取りになりがちです。
しかし、そういったやり取りが日常的に続くと、子どもは「自分から何かを伝えなくとも大丈夫だ」というような状態になります。「受け身」な感じの子どもに育っていってしまう可能性が高くなります。自己主張も苦手になりがちです。
家庭において、そういった受け身な感じの子どもは、家庭の外においてもどうしてもそういった受け身な感じになりがちです。友達や教師との関わりにおいても、自分から何かを伝えていくというよりは、相手からのアクションを待つようなイメージです。
「褒める」ことが自信につながる
自己主張が苦手な子どもに対してだけではありませんが、子どもの力を伸ばしていく際には「褒める」ことが重要です。
自己主張が苦手だということの裏側には「自信の無さ」がある場合が多いです。自信を付けさせていくには「褒める」ことが定番です。
先ほども書いた小さな自己決定において、たくさんの褒める機会を作ることができます。まず、自分で決めたことを褒めることができます。
自己決定はこれからの様々な場面で必要になることを伝えながら、褒めます。そして、その決定によって、物事がうまくいったら、もちろん褒めます。
もしうまくいかなかったとしても「失敗から学ぶことはたくさんある。」ということで、良い経験ができたと褒めるようにしていきます。
このように様々な機会で「褒める」ことで、子どもの自己肯定感が高まっていくことが多いです。そして、自己肯定感が高まることで自分の思いを出していくことの自信につながっていきます。そういった成功体験が「自己主張が苦手」からの脱却につながるでしょう。
今回、自己主張が苦手な子どもへの関わり方についてまとめました。子どもの自己主張に関しては、子どもだけの問題ではなく、親の関わり方が大きな影響を与えていると思われます。こういった機会に親の子どもへの関わり方について考えてみる良いチャンスなのかもしれません。