子どもの学び・教育

【保育士監修】子どもの絵の発達過程に合わせた「絵を描く道具」の選び方

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この記事を書いた人
いしみほ さん【育児コラムライター】

社会福祉学を専攻し、保育士・幼稚園教諭の資格を持つ育児コラムライター。社会福祉学部では「家庭環境ごとの子どもへの支援の必要性」や「北欧各国の福祉と教育」を学んだ知見を活かしコラムを執筆。2人のお子さんを育てながら、執筆の他にハンドメイド作家(タティングレース、イヤリングなど)としても活動中。

「子どもにクレヨンや色鉛筆を渡しても全然お絵かきをしない」
「線ばかりを書くだけで顔のようなものが全然描けない」
「園では色々製作してくるのにどうして?」

子どもが大きくなってくると遊びの幅を広げてあげたくて、お絵かき道具を買ってあげることがありますよね。

でも、いざ与えてみたら、全く興味を示さなかったり、絵のようなものが描けなかったりちょっと残念な気持ちになったことはありませんか?

実は、小さいお子さんが楽しく絵を描くためにはちょっとしたコツを押さえることが大切なんです。今回は保育士の私から子どもが楽しくお絵かきをするために知って頂きたい道具の選び方や言葉がけの方法をお話していきたいと思います。

お絵かきが好きになる・楽しくなるのに必要なのは「子供の成功体験」

まず、子供が絵を好きになるために必要なことについてお話します。私の専門分野は幼児教育です。その知識から絵が好きな子と嫌いな子の違いを考えると、絵が好きな子というのは「絵を通して成功体験をしている」ことが多いと言えます。

ここでいう成功体験とは「子どもが自分の絵を肯定してもらえたと感じたか」ということです。

例えば、お絵かきが好きな子というのは、身近な大人がお絵かきをした作品を褒めてくれたり、飾ってくれたり、感謝された経験をたくさんしています。

こういった経験によって子どもは自分の絵を好きになることができ、お絵描きをすることに対して「楽しい」という感情を持って取り組めるようになっていきます。

ですから、成功体験が多い子はどんどんと絵を描くようになって結果的に絵が上手になっていくのです。

反対にお絵かきが苦手な子というのは、親御さんから「それはちょっと違うんじゃない?」と強制されてしまったり、お友達から「お前の絵下手だな」と笑われてしまったり、先生から「もっとこうしなさい」と否定されたりしています。

つまり、お絵かきを通して自分を否定された体験をしてしまっていることが多いのです。自分が描いたものを否定されてしまうと子どもは絵を描くことに肯定的になれません。こうして、絵が苦手だと感じた子どもはお絵かきを嫌いになってしまうのです。

ですから、子供に絵を好きになってもらうには絵を通じた「成功体験」がとても大切です。

絵を描くことは子どもにとって難易度が高く、難しい。

また、私たち大人が忘れてしまいがちなことの一つですが、小さい子どもにとって「絵を描く」という動作は難しいことの連続です。なぜなら絵を描くという動作は

  1. まだ握力がない手でクレヨンやペンを持たなければいけない
  2. 一定の力を維持しながら手首を動かさなければいけない
  3. 限られた紙のスペースに描かなくてはいけない

最低でもこれだけのことをこなさなくてはいけないからです。大人にとっては何でもない動作であっても生まれてまで数年の子どもにとってこれはとても難しいことです。

ましてや、子どもはまだ集中力もありません。じっとした状態で長時間ペンを持つことなど5歳児でもなかなかできないことなのです。

子どもの絵の発達過程を理解する

絵を描くことが難しいといっても、年齢によって難しいと感じることは違います。子ども発育・発達は子供によって様々です。

絵の描き方も子供によって様々ですが、おおよそ次のようなステップを踏みます。

  • 【錯画期】1歳半~2歳半
    なぐりがきの時期で、点や線に意味を持たせたりする。
  • 【象徴期】2歳半~4歳
    ぐるぐると渦巻きを描くようになり、意味を付けたりする。
    象徴的な図形から特徴(人の顔など)が少しづつ出てくる。

  • 【図式期】5歳~8歳
    少しずつ複雑な形(家、鳥、花、太陽など)を記号・図式的に描くことが出来るようになってくる。

発達の進み方は人によって違いがあります。そのため大まかなステップだと思っていただければ大丈夫です。

ですがお子さんによっては「保育園ではかけるけど、家では上手に描けない」という子もいらっしゃるといいます。

実は保育園では、絵を描く環境を整えるサポートを行っているからなのです。

保育園や幼稚園で絵を描けるのは「道具選びと環境作り」

「でも、園では色々作品を作ったり絵を描いてきたりしているし…」と疑問に思うお母さんもいると思います。これはお子さんが通っている園の先生達の努力の賜物です。

例えば、保育園や幼稚園では何か製作をすることを決めたら、先生達は使う教材を徹底的に選びます。

絵の具を使うならどのくらいの太さの筆にするか、クレヨンを使うなら難色か色を限定すべきか、にじみ易い紙を使うか、それとも発色の良い画用紙を使うか…。

使用する材料が子ども達にとって使いやすいものかどうか、発達段階に合っているかしっかり検討した上で材料を決定します。さらに、お手本の見せ方などもきちんと考えてからやっと本番の製作を開始しているのです。

意外と知られていない努力だとは思いますが、何気なくお子さんが持って帰ってくる絵も「どうしたら楽しく製作できるか」ということを保育士が一生懸命知恵を出して取り組んでいるものなのです。

子どもにお絵かきをさせる時に押さえるべきポイント

小さいお子さんが家庭でお絵描きを楽しめるようにするにはいくつか押さえるべきコツがあります。今までお話した点も含めてまとめてご紹介します。

ポイント1 子供が握りやすい道具を選ぶ

先ほどもお話したように幼児の握力はまだまだ未熟なので、握り易い道具を選んであげるようにして下さい。

画材としてお絵描きデビューにおすすめなのは王道ですがやはり「クレヨン」です。太めの設計で握り易いですし、あまり力を入れなくても紙の上でキレイに色が出るため子どもも満足感を得やすいからです。

逆に、色鉛筆は3歳児未満だと紙にこすりつける力がまだ弱いので色が出にくくあまりおすすめできません。ペンはインクの発色はいいですが、クレヨンよりも紙に突っかかってしまいやすく滑らかな線が描きにくいのでいきなり始めるのはハードルが高いかなと思います。どうしてもペンが使いたいということであれば、太めの握りやすい水性ペンをおすすめします。

ポイント2 絵を描く紙は、最低でもB4サイズを選ぶ

幼児さんにとって限られた枠内に線を描くのは難易度が高いことです。ですから絵を描く紙にも注意が必要です。

特に紙の大きさに関してはできるだけ大きいものからスタートして下さい。最低でもB4サイズくらいの大きさがないと、小さいお子さんは線を引くのも難しくなります。大きめの画用紙などを用意して思い切り描かせてあげましょう。

縦 352mm ×横 251mm、枚数:24枚、品質の高い国産画用紙です。

ポイント3 汚れてもいい服装と汚れてもいい環境を用意

お絵描きに夢中になると子どもはありとあらゆる形で服を汚します。また、力の制御が上手くできずにはみ出たりしてしまうこともしょっちゅうです。せっかくお絵描きに集中しているのに大人が「汚さないで!」と声をかえてしまうのは子供の集中力が途切れますし、製作意欲を奪ってしまいます。

お絵描きをする際はできれば汚れてもいい服装にし、下に新聞紙・レジャーシートを敷くなどして多少はみ出ても問題ないようにしておきましょう。

こういった工夫が大変だという方は画材そのものを水で落ちるものにしておくと安心です。私がおすすめするのは「水で落とせるクレヨン」。油性のクレヨンと違って洗濯すれば簡単に落ちるので、普通のクレヨンより少々お値段はしますが、汚されるストレスが無いのでおすすめです。

手足や体についても水で容易に落とせる。ミツバチの巣より採取されるみつろうを原材料の一部に使用。力いっぱい握って描いても折れにくい太さ

最後の一押しが大切!絵を描いた時の正しい褒め方

子どもが絵を描いたら自分の絵を好きになってもらうためにも、ぜひ親御さんが褒めてあげて下さい。ですが、褒め方も押さえて頂きたいポイントがあります。

「凄いね」「上手だね」とご褒美は禁止

つい大人がかけてしまう声かけはやはり「凄いね」「上手だね」という言葉だと思います。ですが、これでは大人に評価されることが目標になってしまうので自分が描きたいものを描くというよりは、大人が見て喜ぶものを描くようになってしまいます。

また、ご褒美についてもNGです。好きで絵を描いている子どもにご褒美を与えると、ご褒美を貰うこと自体が目的になってしまいます。

子どもの能力を伸ばすためには、子ども自身が「描きたい」と思い、それを「楽しい」と感じられるかどうかがとても大切です。ですから、たとえお子さんが素晴らしい絵を描いたとしても「凄いね」「上手だね」とご褒美を与えることは控えるようにして下さい。

とことん具体的に褒めるか「ありがとう」を伝える

では、どのように褒めてあげると良いのかというと、具体的に良かったところを伝えてあげて欲しいのです。例としては以下のようなものです。

  1. 「このチョウチョとても綺麗な色をしているね」
  2. 「このぐるぐる描いた線、元気いっぱいで楽しそうだね」

大人とやりとりができるようになってきた3歳くらいのお子さんなら「これは何を書いたの?」と聞いてあげるものおすすめです。

少し会話ができるようになっていれば「お父さんを描いたの」「ここは公園なの」と想像を膨らませがなら楽しそうに話してくれたりします。こういった言葉がけはイメージ力を伸ばすことにも繋がります。

また、お子さんがお母さんやお父さんの顔を描いてくれたという時は「とっても嬉しいよ」「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてみて下さい。絵を描くことで誰かが喜んでくれると知れば、お子さんは自分の絵を肯定的に受け止めることができるようになります。

子どもがお絵かきを楽しいと思えれば、後は大人が何もしなくても勝手に上手になっていくものです。ぜひ、具体的な褒め言葉や感謝の気持ちで最後の一押しをしてあげて下さい。

子どもは大人の手を見て「まねぶ」

いかがでしたか?今回は子どもがお絵描きを楽しむために必要なことについてお話させて頂きました。最後に私から親子で一緒にお絵描きをする大切さについてお伝えさせて頂きます。

小さい子と一緒にお絵かきをしていると「あれを描いて」「これを描いて」とリクエストしてくることがありますよね。そうすると親御さんは“あなたが見て描けばいいじゃない”と言いたくなってしまうかもしれません。

ですが、実は子どもは「うさぎが描いた紙が欲しい」のではなくて「うさぎを描いているところを見せて欲しい」と言っているのです。

私がこれに気付いたのは3歳の娘にライオンを描いてあげている時のことです。

ある時、私が娘に頼まれたライオンを紙の上に描いていると、その横で娘は私の手をジーっと見ていました。するとしばらくして娘は拙いながらライオンを描き始めたのです。しかも私が顔の輪郭、顔のパーツ、たてがみという順番で描いたのと全く同じ順番で描いていました。

子どもはよく大人の真似をして色々なことを学んでいくので「まねぶ」という言葉が使われるのですが、お絵描きに関してもまさに子どもは「まねぶ」をしていたことが分かった瞬間でした。

家事の手を止めてお絵描きをするのは時には面倒に感じるかもしれません。ですが、お子さんは色んなことを「まねぶ」真っ最中です。時間がある時はぜひ親子でお絵描きを楽しんで頂けたらと思います。

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