ゲーム依存症とは、正式名を「ゲーム障害」といい、疾患として認められているものです。多くの小学生の子どもたちがゲームやスマホに熱中してしまう現状があり、それが一定の基準を超えて日常生活に障害をきたしている場合は治療が必要になります。
この記事では、ゲーム依存症とはどのようなレベルを指すのか、依存症になってしまった場合どのような方法で解決していくかを解説しています。
また、ゲームというものを通して子どもとどう関わっていくか、どんなところに目を向けていったらよいかなども深く掘り下げて考えてみたいと思います。
小学生・中学生がゲーム依存症になる原因とは?
ゲーム依存症は、プライベートな時間が増える中学校以降の年代から急増します。現代の子どもにとってゲームは身近なものですが、依存症になってしまうほどのめり込むその原因は、いったいどこにあるのでしょうか。
①不安から逃れる現実逃避の傾向
どんな子どもも、日常生活の中で不安や緊張などを感じながら生きています。しかし、その不安や緊張を解放して安心できる「居場所」が確保されていない場合、つらい現実から逃れるためにゲームという仮想現実にのめり込んでしまうおそれがあります。
激しい競争の中で活動することや、結果を出さなければいけない焦りや恐怖感などを抱いている場合も少なくありません。
負の感情から逃れる場所が、ゲーム以外の場所にない場合、特にのめり込みやすいと考えられます。
②日常生活に達成感や幸福感がない
ゲームは「クリア」しながらレベルアップしていくことに快感を覚えます。この快感は達成感や幸福感を指しています。ゲームの中で結果を出したり、うまくできたりすることによって達成感や幸福感を得ている状態です。通常は、日常生活の中で達成感や幸福感を得ながら生活し、成長していきますが、その充足感が得にくい場合にバーチャルな世界でその感覚を埋めようとしているのです。
③強い孤独感
学校や家庭に自分の居場所や安全基地がなく、強い孤独感を抱いている場合もゲームにのめり込みやすいです。人とうまく関われなかったり、いじめを受けたり、家庭内でのコミュニケーションが著しく少ない場合ゲームに熱中する傾向も強くなります。
特に、ネットにつながったオンラインゲームでは、人との強い繋がりを感じ孤独感が埋められる感覚があるため「ここが自分の居場所である」と感じ、依存しやすくなります。
④ゲームがより身近になっている現状
現代では、携帯できるゲーム機器も多く、スマホも普及していることによりいつでもどこでも簡単にゲームにアクセスしやすくなっています。
・少し時間が空けばゲームを開いてしまう
・他のことよりもまずスマホやゲームに意識が行ってしまう
こんな行動パターンは、現代のネットやスマホの普及という「環境」も大きな要因となっています。
また、以上4項目のほかにも、ゲームを習慣的に始める年齢が低ければ低いほどゲーム依存症になりリスクが高まることもわかっています。
小・中学生の子どものゲーム依存症の診断はどこでするの?
ゲーム依存症の診断は、医療機関で行われます。ゲーム依存症は「ゲーム障害」といい、WHOで疾患に指定されていますので適切な治療が必要です。
医療機関での診断をする前に、地域の相談窓口や電話相談サービスを利用して、第三者の意見を聞いてみるのもよい突破口となります。中高生くらいになると、体力もあり体も大きくなっているでしょう。家族だけで対処しようとすると、甘えや反発心などから家庭内暴力に発展してしまうこともあります。
詳しい診断内容は、次の項目のチェックシートと診断基準を参考にしてみましょう。
ゲーム依存症の基準とチェックシート
- 常に頭の中にゲームのことがある。いかにゲームをするかばかり考えてしまう。
- ゲームができない状況や、プレイ時間を減らさなければならない場合に精神が不安定になる。イライラ・ソワソワ・無気力感など。
- 日を追うごとにプレイ時間を増やさないと気が済まない。ゲーム機器がより高度なものになる。
- 一度ゲームを始めるとなかなか終わることができない。プレイ時間を減らすことができない。
- 日常生活に明らかな障害が出ていても、ゲームを続けるかもしくはよりエスカレートしてしまう。
- ゲームのせいで他のことへの興味や趣味、娯楽をなくしてしまう。もしくはゲーム以外に好きなことがない。
- 嫌な気分、困った出来事から逃れるためにゲームを使用する。
- ゲームの使用のために家族や治療者など身の回りの人に嘘をつく。
- 大事な人間関係をゲームによって危うくしている、もしくは失った。
こちらのチェックリストは、インターネットゲーム障害のチェックリスト(DSM-5)の文面をわかりやすく書き換えたものです。5項目以上当てはまる場合、治療が必要な状態と判断できます。
- ゲームに関するコントロール能力を失っている
- 他の関心事、日常の活動よりゲームを優先する
- 問題が起きていることを自覚しつつゲームを続ける、またはよりたくさんプレイする
- 個人、家族、友人関係、学校生活などの重要な関係性や集団に障害を引き起こしている
なお、臨床的には上記4項目に当てはまり、その状態が12ヶ月以上継続している場合ゲーム障害と診断されます。ただし、上記4項目が重要と判断される場合はそれ以下の期間であっても、診断が可能です。
ゲーム依存症の治療はどうしたらいい?
ゲーム依存症になってしまった場合は、心理社会的治療と薬物治療の2つの治療方法を用います。
ゲーム依存症の心理社会的治療とは?
臨床カウンセラーや認知行動療法士などによる、コミュニケーション型の治療です。ゲーム依存症になる場合、本人だけでなく家族との関わり方も大きな原因のひとつとなっている可能性があります。そのため、本人だけでなく家族治療も行う必要があるでしょう。ゲームができない状況にするために、入院や合宿型の治療が行われることもあります。
ゲーム依存症の薬物治療とは?
薬物治療は、ゲーム依存症によって合併してしまった心の病気や症状に対して行います。薬を飲めば依存症状がなくなるといったことはありません。かならず心理的・社会的なケアと並行して使用します。
子どものゲーム依存症、一体何が問題なの?
ゲーム依存症の実態を知ることは大切ですが「依存リスクがあるからゲームは悪である」という考え方はすこし偏っています。
また、単純にゲームが好きなことや、ゲームをついついやりすぎてしまうことと、依存症と呼ぶべき状態は大きく異なることをおさえておきましょう。
私たちが生活する現代には、依存に陥りやすい娯楽や食べ物、嗜好品がたくさんあります。その中で、子どもがもっとも心の隙間を埋めやすい位置にあるものがゲームだというだけで、ゲームそのものが害悪なわけではありません。ゲームから得られる知識や友達との交流など、メリットさえあるという意見も少なくありません。
どんなものでもバランスを崩してしまうからこそ「疾患」になってしまうだけで、ゲーム自体が悪いものであるという認識は偏っているといえます。
小学生・中学生がゲーム依存症のせいで勉強しない?
「ゲームのせいで子どもが勉強をしない」という思考について考えてみましょう。
自分の子どもが勉強をしない、宿題をしないのはゲームがしたいという理由だけでしょうか。なぜ勉強をする必要があるのか、勉強する場所や環境は整っているか、そして勉強やその他の活動を通じた親子の関わり合いをトータルで見直してみる必要があります。
勉強や社会生活の大切さを、親御さん自身が自分の言葉で子どもに説明することができるでしょうか。なぜ、ゲームばかりではなく勉強も並行してやっていく必要があるのかということを話せるでしょうか。そして、そのことに対して子どもが聞く耳を持てる「信頼関係」があるかどうかも、ゲームと勉強の関係には深く関わってきます。
「やるべきことだから」「当たり前のことだから」「受験だから」という漠然とした動機で、率先して勉強する子どもはそれほど多くありません。それに加えて、一方的に「やりなさい」と指示されたり、やらないと罰を与えられたりするようなことで、子どもがゲームより勉強を選ぶようになるとは考えにくいものです。
ゲームをやりすぎるのは子どもの性格?
ゲーム依存症の原因は、居場所のなさ、孤独感、自己肯定感の低さ、常にゲームができる環境……というこの4つが挙げられます。こうした状況にいる子どもは、勉強の先に得られるものの見通しが立っていません。また、親子関係での相互的なやりとりが少ない、心を許せる友人がいないなどということも、心のバランスが崩れてゲームに逃避する原因ではないでしょうか。
また、親自身がスマホを長時間使用していれば当然ながら、子どももゲームやスマホ、ネットにのめり込んでいきます。親自身が自分の趣味や楽しんで取り組む活動をしているかどうか、心に余裕をもって生活できているかどうかによっても、子どものゲーム依存症リスクは変化すると考えてもよいのではないでしょうか。
もちろん子どもの個性によって、好きなことに集中しすぎてしまったり、ひとりの世界に閉じこもりやすいタイプだったりする場合もあります。しかし、そんな子どもの特徴や個性の部分を、親御さんが観察しながら管理することによってゲーム依存症はじゅうぶんに防げるものだと感じます。
小学生・中学生のゲーム依存症は、管理とコミュニケーションが大事
ゲーム依存症を防ぐには、親御さんによる監督や管理が欠かせません。子どもの行動をある程度観察し、把握することで悪化は防げるものです。ゲームは心の空虚感を埋める「対象物」に過ぎないので、その空虚感を満たすために何ができるかを一緒に考えていくことが子どもをゲームのデメリットから守ることになります。
ときどき親も、一緒にゲームをして喜びや楽しさを分かち合うのもいいでしょう。また、野外活動や趣味などを親子・家族で一緒に行う時間を増やすことも、ゲーム依存を防ぐ工夫のひとつです。
また、子どもとの日常的な会話ややりとりの仕方で、子どもが充足感を得られているかどうかも常に振り返っておくとよいのではないでしょうか。
また「ゲームではなく違うものに熱中してほしい」という時におすすめなのがロボットプログラミングです。プログラミング学習とはなにか、ねらいは何なのか、自宅で学習するならどういった教材がおすすめかといった事をこちらで解説しています。
ゲームとプログラミングは非常に相性が良いです。ITエンジニアは既に需要のある職業になります。子どものゲームが好きという特徴を伸ばすには、ぴったりの勉強となります。
参考文献:https://www.mhlw.go.jp/content/12205250/000616333.pdf