かこさとしさんの作品『からすのぱんやさん』という絵本をご存知でしょうか。
今から40年以上も前に描かれた作品で、本の写真を見ると「子どもの頃読んだ!」と思い出す方も多い作品です。
個性豊かなカラス達が登場する『からすのぱんやさん』シリーズは、子ども達も大好きで読み聞かせにうってつけの絵本です。
今回はそんな『からすのぱんやさん』の絵本について、あらすじやみどころ、読み聞かせの所要時間など保育士の私から詳しくお話させて頂きます。
『からすのぱんやさん』の作者と絵本誕生のひみつ
初版は1973年、かこさとしさんによって描かれた作品です。かこさんは1926年福井県生まれ、工学博士で東京大学工学部卒業後、昭和電工に勤務しながら創作をスタート、退社後に絵本作家、児童文化の研究者となったという経緯があります。
かこさんは子どもの頃、10銭ほどのお金を持って文具屋さんで食パンを買いに行った思い出があり、美味しくて憧れのものであったことからパンを題材に絵本を描いたとインタビューで語っておられます。(※1)
かこさんは学生の頃から、子ども達が何に喜んでくれるのかずっと研究されている方で、大学時代は演劇研究会に所属して、子ども向けの演劇を担当したり、社会人時代も人形劇団の手伝いしたりしていました。
「ザリガニやトンボがライバルだったんです。それらに勝てるようなお話にしなければ、と。とにかく子どもさんたちを観察し続け、たくさんのことを教えてもらったんです」(※1)
と作品を描く上でいかに子どもの視点を大切にしていたかをお話されています。
『からすのぱんやさん』対象年齢何歳から?
出版している偕成社の公式HPによると「4歳から」という表記になっています。(※2)
実際に読み聞かせをしてみたところ、対象年齢である我が家の4歳の娘は最後までお話が聞けますが、現在1歳8ヶ月の息子は半分も読まないうちに集中力が途切れてしまいました。
ですので、やはり4歳くらいの年齢から読んであげるのが妥当かなと思います。
『からすのぱんやさん』読み聞かせの所要時間は?
参考までではありますが、私が実際に子ども達に読み聞かせをして8分半でした。ですので「約10分」で読んで頂ける印象です。
8分というのは幼児に読む絵本としては長い方です。文字量も多いので子どもの集中が続かないようであれば、2回に分けて読むと理解がしやすくなるのでおすすめです。
『からすのぱんやさん』のあらすじは?
いずみがもりにはたくさんの木があり、そのたくさんの木の上にカラスの家がありました。そのカラスのまちのパン屋さんに可愛い4羽の子ども達が生まれました。
4羽のカラスの赤ちゃんは黒色ではなく、それぞれ白色、赤色、黄色、茶色をしていました。お父さんとお母さんはオモチちゃん、リンゴちゃん、レモンちゃん、チョコちゃんとそれぞれにピッタリの名前をつけて、大切に育てました。
しかし、子育てとパン屋さんの両立はとても大変でした。パンを焼いていても、お店を掃除していても子供達が泣き出すと手を止めてあやしたり、お世話をすることになるので、パンがこげてしまったり、お客さんを待たせてしまったり…。
そうしているうちにお客さんがどんどん来なくなってしまってパン屋さん一家は貧乏になってしまいました。
ですが、家が貧しくても子供達は元気いっぱいに育ち、こげたぱんや半焼けになってしまったパンをおやつ代わりにたくましく育ちます。
毎日のように4羽の子ども達がこげたパンや半焼けのパンを美味しそうに食べているので、友達のカラス達が興味を持って…
と全部話したいのですが内容はこれくらいにしておきます。
最後には色々なことがあって、いずみがもりのカラス達がパン屋さんに向かって大集合してしまいます。一家以外のカラス達も個性的でとても面白いですよ。
『からすのぱんやさん』みどころと感想
パン屋さんと子育てに頑張るお父さんお母さん、お店を繁盛させるために家族一段となって頑張る姿はとても印象的です。
子どもだけでなく、親である私が見ても共感し応援したくなる気持ちになります。
また、見開きいっぱいに様々なパンが描かれたページは子供達が大好きなページの一つです。実際のパン屋さんでも見たことがないユニークなパンがたくさん並んでいます。
お子さんと一緒にぜひお気に入りのパンを見つけてみて下さい。
『からすのぱんやさん』はこんな子におすすめ
やはり面白いパンがたくさん出てくるので、パンが好きな子やお料理が好きな子は楽しいと思います。兄弟がいる子や2人以上子供を育てたいと考えているご家庭でも「家族っていいな」と感じることができおすすめです。
あとは家で仕事をされることが多い親御さんや、自営業をされているご家庭にも良いと思います。絵本を通してお父さんやお母さんが働いている姿を想像するという良い機会になるのではないかと思います。
『からすのぱんやさん』シリーズの本
『からすのぱんやさん』シリーズのお話は全部で5冊あります。
<『からすのぱんやさん』のシリーズ絵本>
- からすのぱんやさん
- からすのおかしやさん
- からすのやおやさん
- からすのてんぷらやさん
- からすのそばやさん
『からすのぱんやさん』の続編は4羽の子供達が大きくなり、色んなきっかけがあってお店を始めたり、手伝ったりする中で成長していく過程を描いています。
オモチちゃん、リンゴちゃん、レモンちゃん、チョコちゃんの成長を見届けていくのもとても面白いので気になった方はぜひ読んでみて下さい。
『からすのぱんやさん』は困難の乗り越え方をそっと教えてくれる作品
今回は絵本『からすのぱんやさん』をご紹介させて頂きました。初版は40年以上も前という古い作品なので表現が今の作品とは少し違いますが、現在でも子ども達に人気のある作品です。
『からすのぱんやさん』シリーズは色んな困難を皆で工夫して乗り越えていく姿が他の絵本よりもとても印象に残ります。
長い人生を生きていく中で「辛いことがあっても、工夫して乗り越えればきっと大丈夫」ということをそっと教えてくれる作品です。
まだ読んだことがないという方はどの作品もとても面白いので、ぜひ一度お子さんに読み聞かせてあげてみて下さい。
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参考資料
※1 Hanako tokyo
https://hanako.tokyo/news/report/38948/
※2 からすのぱんやさん 偕成社
https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784032060706