子どもの学び・教育

保育士推薦の絵本『わたしのワンピース』その素晴らしさと内容をご紹介

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いしみほ さん【育児コラムライター】

社会福祉学を専攻し、保育士・幼稚園教諭の資格を持つ育児コラムライター。社会福祉学部では「家庭環境ごとの子どもへの支援の必要性」や「北欧各国の福祉と教育」を学んだ知見を活かしコラムを執筆。2人のお子さんを育てながら、執筆の他にハンドメイド作家(タティングレース、イヤリングなど)としても活動中。

保育士の間でも人気のある作品『わたしのワンピース』をご存知ですか。1969年に出版された絵本なのですが、150万部の大ベストセラーを記録し、私の在学中には大学の教科書にも載っていた非常に有名な作品です。
今回は西巻茅子さんの作品『わたしのワンピース』についてその概要と魅力を保育士の私から詳しくご紹介させて頂きます。

にしまき かやこ (著)
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『わたしのワンピース』作者と絵本誕生のきっかけ

『わたしのワンピース』の作者は西巻茅子(にしまき かやこ)さんです。西巻さんは1939年東京都生まれで、東京芸術大学美術学部工芸科卒業されています。
『ちいさなきいろいかさ』で第18回産経児童出版文化賞を受賞され、他にも『えのすきなねこさん』『だっこして』『きんぎょのトトとそらのくも』など多数の絵本を描かれています。
西巻さんのお父様は画家を、お母様は洋裁の仕事をされていました。子どもの頃からお父様のアトリエで絵を描いたり、お母様の仕事で余った布の端切れで遊んだりするのが西巻さんの日課だったそうです。
そんな西巻さんは子どもの頃、着せ替え人形をするのが大好きでした。色んな服を描いて着せるのがとても楽しかったそうで、その気持ちをそのまま絵本にしようと思ったのが『わたしのワンピース』を描いたきっかけだったといいます。

最初は不評だった?『わたしのワンピース』の意外な出版秘話

今でこそ不動のロングセラー絵本となった『わたしのワンピース』ですが、発売当初は大人から非常に不評だったと言います。
『わたしのワンピース』が出版された1969年頃というのはオリジナルの絵本が非常に少なく、当時は名作や民話に絵をつけた絵本がほとんどでした。そのため、絵本とは言ってもどちらかと言うと「子どものために与える教養の1つ」であり、「ためになるストーリー重視」という傾向が強くありました。
しかし、西巻さんは自分で絵本を作るなら絵が主役の作品を作りたいと思っていました。そのため『わたしのワンピース』は最初文字のない絵本だったそうです。
ですが、編集者の方から理解が得られず、かといって西巻さんも絵が主役の絵本なのだから余計な説明は入れたくないという想いがありました。
そして、話し合いの結果ごく短い文章を足すことになったと言います。
ようやく出版しても、こんなに文字が少ないと何が言いたいのか分からないと大人から非難されたことも多かったようです。

子ども達の感性が選んだ『わたしのワンピース』

発売当初は大人からの非難が多かった『わたしのワンピース』ですが、5~6年経つと徐々に子ども達から人気が出始めます。
そして、新聞で「常に貸し出し中で本棚にない本」として図書館の方が紹介するほどになり、現在では150万部の大ベストセラーとなりました。
まさに「子ども達の感性が選んだ絵本」だと言えますね。

西巻茅子さんの絵本への向き合い方

西巻さんは自分で絵本を描くと決めた時、今まで習ってきた絵の技術を全て捨てることを決心したと言います。
絵本作家になる前、西巻さんは子ども達に絵を教える仕事をしていました。その中で西巻さんは、画材道具さえあれば子どもは大人には描けない自由で素晴らしい絵を描く力があることに気付いていました。
子ども達の絵を描くことそのものを楽しんだ絵、生きる力に溢れた絵の力を目の当たりにし、そういった心を忘れていては良い絵が描けないと感じていたそうです。
大人になると社会の中で色々なことがあり、その力を失ってしまうと気付いた西巻さんは、子ども達の心に届くように「素の絵」を描いていこうと日々絵と向き合っていると言います。
こうした西巻さんの絵への真摯な姿勢は、絵本を見ればよく分かります。余計な装飾のないシンプルな作風ながら、子ども達が夢中になる作品へと繋がっているのはこうした想いが根底にあるからだと私は思います。

『わたしのワンピース』のあらすじ、対象年齢などを詳しく解説

ここからは『わたしのワンピース』の絵本の内容や魅力等について詳しくご紹介していきます。

『わたしのワンピース』あらすじは?

真っ白いきれが空から落ちてきて、うさぎさんは白いワンピースを作りお散歩に出かけます。
すると、不思議なことにお花畑に行くとワンピースは花模様になります。雨が降るとワンピースは水玉模様に、草の実畑を歩くとワンピースは草の実模様になります。
草の実模様のワンピースを小鳥が食べにくるとワンピースは小鳥模様になり、うさぎさんは空を飛んでいきます。そのまま空を散歩するとワンピースもいろんな模様に変化していって最後は…
と、全部話してしまいたいのですがこれくらいにしておきます。
色々な模様に変わっていくワンピースが最後はどんな模様になるのか、ぜひ読んでみて下さいね。

『わたしのワンピース』対象年齢は何歳から?

出版元のこぐま社のHPを確認したところ「3歳から5歳ごろまで」という表記でした。ただ、元々文字がない絵本であっただけに、絵を見ればかなり理解ができるのでもっと小さい年齢から読んであげて問題ないと思います。
参考までですが、私はこの絵本を娘が2歳の時にプレゼントしました。2歳の頃からかなりのお気に入りで、絵本の中のフレーズをすぐに覚えて楽しんでいました。
また、1歳10ヶ月の息子も最後までお話が聞けることが多いです。
逆に、現在娘は4歳半になりひらがなを覚えたこともありもう少し長い絵本を好むようになってきました。
ですので、あくまで私の感覚ですが「2歳前後~5歳まで」が良いのではないかなという印象です。

『わたしのワンピース』読み聞かせの所要時間は?

実際に私が子どもに読んで2分30秒くらいでした。文字は非常に少ないのでじっくり読んでも3分ほどで読みきれると思います。

保育士が考える『わたしのワンピース』の素晴らしさ

『わたしのワンピース』で私が最も素晴らしいと思うのは、子ども達の想像力を豊かにしてくれる点です。
この作品は先にもご紹介したように「子どもへのメッセージ」が強く出る本ではありません。何かを教えよう、諭そうとするような文章は一度も出てきません。
もちろん、強いメッセージ性がある絵本が悪いわけではないのですが、メッセージ性を重視するあまり、子どもが自由に想像したり楽しんだりする機会を奪ってしまうこともあると思うのです。

大人の想いが強すぎると子どもは自由に想像することができない

例えば、子どもとお絵かきをすると大人は「髪の毛は黒でしょう?」「空は紫じゃないよ」とつい口出ししてしまうことがあります。大人の考えに当てはめた見栄えの良い絵を描かせてしまうのです。
これは、絵本にも同じような側面があります。
絵本には「優しい子」「元気な子」「真面目な子」というのがたくさん出てくるイメージはありませんか。これはある意味「大人の理想の子どもの姿」を押し付けている部分もあると私は思います。
大人の想いがあまりにも強いと、先ほどのお絵描きのように子ども達は自由に想像ができなくなってしまうのです。

『わたしのワンピース』の最大の魅力は「想像の余白」

『わたしのワンピース』には強いストーリー性がない分、子ども達が自由に想像する「余白」があります。 “私ならどんなワンピースがいいかな”“ここを歩いたらどんな模様になるかな?”とワクワクできる時間があるのです。
私も多く絵本を読んできましたが、こうした「想像の余白」がしっかりある絵本というのはあまり多くはありません。絵本というのは何かしらのメッセージが含まれていることが多いのです。
ですが、自分で想像するというのは大人が思っている以上に大切な能力です。
スポーツをする際に動きを予測するのも、勉強で仮説を立てるのも、友達の気持ちを考えるのもその基礎となるのは想像力だからです。
「大人の型に当てはめようとしない」「子どもの自由な想像を促してくれる」それがこの絵本の最大の魅力だと私は思います。

お母さんが選んだ絵本ならどんなものでも素晴らしい

今回は50年以上愛される絵本『わたしのワンピース』についてご紹介しました。
西巻さんはあるインタビューで絵本を読むことについて

「本を読むとお利口になるとか、そういうやましい心は持たずに、純粋に絵本を楽しんでほしいですね。お母さんが子どものために選んだ絵本なら、何だっていいんです。お母さんが子どものことを大事に思う心が一番大事だと思いますよ。」(※1)

と、お話されています。
大人が絵本を読む時、つい子どもへの想いが強くなってしまうことはよくあることです。お恥ずかしい話ですが、私はこの言葉を読んでハッとした気持ちになりました。

にしまき かやこ (著)

西巻さんの作品を読むともっと純粋に色んな絵本を楽しもうという気持ちになります。そして今しかない子どもとの絵本の時間を大切にしようと思えました。
まだ手に取ったことがないという方はぜひ『わたしのワンピース』を読んでみて下さい。

参考資料
※1 絵本作家 西巻茅子さんインタビュー(ミーテ)
https://mi-te.kumon.ne.jp/contents/article/12-179/

※2 インタビュー 西巻茅子さん『わたしのワンピース』(Ehon Navi)
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/interview/20091013/

※3 こぐま社
https://www.kogumasha.co.jp/

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