過干渉は「優しい虐待」ともいわれ、不適切な養育だという知識が定着しつつあります。
子どもに干渉するのは親の仕事でもありますが、そこに過度な「コントロール」が入るのが問題です。過剰に干渉的になると、子どもにはさまざまな心理的問題を抱えやすくなります。
この記事では、過干渉を受けた子どもにどのような特徴や症状が出やすくなるのかを解説します。
過干渉を受けた子どもに見られる症状とは?
過干渉を受け続けると、子どもの性格的な特徴に偏りが生じたり、身体的な症状が出たりすることがあります。子どもの元々持っている特徴や家庭環境などによって、現れる特徴や症状には個人差が大きくなります。あくまでも一例として参考にしてください。
1.自分の感情がわからなくなる
過干渉の親は、子どもの感情や意思に注目し「あなたは今こう感じているんだね」「あなたはこうしたいと思っているんだね」という共感が苦手です。幼いころから感情に注目されることなく、過干渉的な教育を受けて育つと「自分の感情がわからない」という問題に直面しやすくなります。
「どうしたい?」と聞かれても言葉に詰まり「どう思う?」と聞かれても、わからないのです。感情がないわけではありませんが、感情を認識して表現する力が乏しくなります。
感情は鮮度が非常に大事です。しかし親子間で素直な感情を表現し、キャッチボールする練習をさせてもらえない場合、瞬発的に感情を把握する力が弱くなります。
2.意欲がなくなり、何事にもやる気が持てなくなる
感情がわからなくなると「意欲」「やる気」も小さくなります。感情とは、エネルギーです。楽しい・嬉しいという感情は「やってみたい!」「試してみよう!」という意欲につながります。しかし、親が子どもの感情や意思を尊重せずすべて先回りしたり、コントロールしたりすれば、自発的な活動を促すエネルギーが生まれません。
やる気や意欲がない原因は親子のやり取りの中にあるのですが、親はそこのことに気づきません。すると今度は無気力であることに対して叱ったり、尻を叩いたりするという悪循環に陥ることも少なくありません。
3.自分で決断したり、選択したりできなくなる
過干渉を受けている子どもは、決断が苦手になりやすいです。子どもにしっかりと感情や主張があっても、親がそれを阻止したり批判したりしてコントロールすると、子どもの記憶には間違った思い込みが形成されます。「自分で選択することはできない」「自分で決めることは悪いことである」という学習が強く残っていくのです。
すると、自分で決めなければいけない場面、自分で選択することが重要な場面でも「それはできない」「やってはいけないこと」と感じてしまいます。傍から見ると、優柔不断で責任感がないなどの印象をもたれることもあり、社会的な評価も下がりやすいです。
4.うつや摂食障害、境界性パーソナリティ障害などのリスク
自分の感情がわからず無気力で、人生は自分でコントロールできるという感覚がなくなっていくと、うつや摂食障害などの精神疾患を引き起こすリスクも高まります。また、親から一人の人間として尊重されず、親の所有物として扱われることによって「自分と他人の境界線」が曖昧になることも問題です。境界性パーソナリティ障害に発展するケースも少なくありません。
社会的な問題としては、自分の人生を生きられない絶望感や、社会を信頼できないことにより進学や就職などの社会的活動を避けることもあります。過干渉的な教育によって、子どもがひきこもりになってしまうことも少なくないのです。
過干渉のレベルが強ければ強いほど、また親からの心理的コントロールを長い期間受けているほど「自分」として生きる感覚を取り戻しにくくなります。思春期を過ぎてから身体的な症状として表れたり、自立できなくなったりする事例も多いです。
過干渉は子どもの精神に根深い影響を与えてしまうにも関わらず、手厚く熱心な子育てをしているように感じたりします。「子どものため」と思ってしていることが、実際は「毒」になってしまうのです。そこで、過干渉型の毒親とはいったいどのような特徴を持っているかや、過干渉になってしまうメカニズムを正しく理解しておくことも必要になります。
過干渉で育てられた子どもは「原因不明」の症状に悩む?
過干渉は、非常に見えにくいものです。目に見える暴言や暴力などはなく、手厚く大切に育てられているように見えることも少なくありません。しかし、実際は子どもの人格をゆがめてしまう可能性をはらんでいることを知っていただきたいです。
当事者たちも自分たちのどこが、どう問題なのかわからないため解決に時間がかかることもあります。子どもは気力が湧かない、体がだるい、無性にイライラするなどの症状を感じるかもしれません。しかし、その原因が親子関係にあるとは全く気付かないケースが多いのです。
子どもが違和感に気づき、周囲に相談しても「良いご両親じゃない」「親子の確執は多少あるものだよ」などと諭されることも多く、共感や理解を得にくいのも過干渉の問題点といえるでしょう。
ただ、子どもは一見無気力で覇気がないように見えても、心のどこかに「怒り」を隠しています。自分の感情に共感してもらえない、自分を愛してもらえていないことに何も感じないわけがありません。根底にある怒りや悲しみに、誰かが気づいてあげる必要があります。もちろん、本人が気づいたのであれば周りの大人がそれを受け入れてあげなければなりません。押し込めていた感情や意思を出せるよう、徐々に促していく必要があります。
過干渉的な教育、長期間に渡って症状に苦しむ子どもも
過干渉な教育をしてしまうのは、親自身の心の問題が深く絡んでいるため、間違いに気づくのが遅くなったり、気づかないまま子どもが成人したりすることも多いです。
自主性や意欲を育てられることなく、親の意向に沿うことばかりを重視して育った子どもは、長期間にわたってその弊害に苦しむのもまた事実です。
決して不安を煽るつもりはありませんが、過干渉になってしまった親、そして過干渉で育てられた子どもの両者は、共に「自分」を取り戻すことにきちんと向き合う必要があります。
そのためには当事者親子だけではなく、子どもを取り巻く周囲の環境、そして大人たちのサポートや理解が欠かせません。過干渉の知識を正しく広めることや、理解を深めていくことも必要なことではないでしょうか。
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