「読書感想文を夏休みの終わりまでやろうとしない…」
「作文が苦手で表現がいつも“楽しかった”で終わっている」
「書けない気持ちは分かるけど、どう教えたらいいのか分からない」
小学校になると発表会や運動会など行事があるごとに感想文の宿題を持って帰ってくるようになります。夏休みには読書感想文を毎年宿題として出されることもあり、感想文を書く機会は意外と多いものです。
しかし、いざ文章を書こうとすると手が止まって「何を書けばいいのか分からない」と子どもに言われることがあります。毎回、感想文の宿題に手を焼いているお母さんもいるのではないでしょうか。
実は子どもが文章を書けないのは、語彙力や文章力の問題ではありません。簡単にいうと、書く前の「下準備」が足りていないことが原因です。
今回は、感想文を書けなくて苦しんでいる子どものために、親ができる具体的なアドバイスの方法をライターの私からご紹介したいと思います。
なぜ書く仕事をしている人は素晴らしい文章を書けるのか
世の中には素晴らしい文章を書く人がたくさんいます。新聞記者やベストセラー作家という職業の人は「文才があるからできるんだ」と思われている人も多いと思います。
しかし、そういった才能があるのは本当に一握りの人です。では、文章を生業にできているのはどうしてなのか。答えは素晴らしい文章を書くために、書く前にしっかりと「下準備」をしているからです。
下準備とは何かというと書く内容、つまり“ネタ集め”です。新聞記者なら取材という方法で書くネタを集め、根拠のあるデータから裏づけを取り、朝刊に載せる記事の内容を決めます。小説家ならモデルを決め、そのモデルの生活や言動についてネタを集め、物語の方向性や内容を決めていきます。
この書くための“ネタ集め”が不十分になると文章に説得性がなかったり、物語に臨場感がなくなってしまったりしてしまいます。ですから、書くプロフェッショナル達は文章の下準備となる“ネタ集め”の作業を大切にしています。
「何を書けばいいのか分からない」から感想文が書けなくなる
子どもは感想文の課題をもらって帰る時、何について書くか“大枠”はもらってきます。例えば「運動会で感じたことを書いて下さい」といったことや「自分で1冊本を読んだ感想を書いて下さい」といった内容です。
しかし、あくまでそれは“大枠”であって文章を書くのに必要な“ネタ”ではないのです。
この状況を大人に置き換えて説明してみましょう。例えばあなたが道でアンケートを求められたとします。そして渡された紙を見たら「最近あったことについて何でもいいので書いて下さい」と書いてあったらどうでしょうか?楽しかったことなのか、面白かったことなのかも分かりませんし、どこにポイントを絞って書けばいいのか非常に困りますよね。
子どもは感想文の宿題を出された時、まさにこんな気持ちなのです。お子さんが「感想文が上手く書けない」というのは「何を書けばいいのか分からない」と悩んでいるということなのです。
感想文を書くために大切なのは「何を書いたらいいか」を絞ること
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。感想文を書きやすくする最も大切なポイント、それは「何を書いたらいいか」を具体的に絞ることです。
先ほどのアンケートの例で考えてみましょう。アンケートの紙に「1ヶ月以内にネットで購入した商品の中で“これは買って正解だった!”と思った商品ついて良かった点を3つ書いて下さい」というタイトルが入っていたとします。そうすると“あぁ、それならあれがいいかな”と書く内容が浮かびやすくなりますよね。
子どもの感想文も同じです。「何を書いたらいいか」ということを具体的な項目で示し、感想文に必要なネタが集めれば、子どもも書く作業に取り組み易くなります。
「行事の感想文」と「読書感想文」は必要なネタが違う
例えば、運動会の感想文を書くために必要なのは「運動会の練習で頑張っていたこと」や「本番でどういった気持ちであったか」、「本番できて嬉しかったことや悔しかったことは何か」といったネタが必要です。
これに対して読書感想文は「どうしてその本を選んだのか」「特に感動したセリフはどこか」「主人公と自分を重ねて思うことは何か」「本を通じて学んだことは何か」といったネタが必要です。
同じ感想文であっても行事の感想文と読書感想文では、文章を書くために必要なネタは全く違います。
しかし、学校の先生は集めるべきネタの項目までは教えてくれません。だから多くの子供達は何を書いていいか分からず、原稿用紙を目の前にして手が止まってしまうのです。
ですから、家庭で子どもが感想文に悩んでいたら文章を書くために必要な“ネタ”を引き出してあげるアドバイスが必要です。
カギを握るのはメモ!感想文を攻略する具体的ステップ3つ
ここまでの段階で、文章を書くために必要なのは“ネタ集め”だと分かっても具体的にどう子どもをサポートしたらいいか悩む方も多いと思います。
そこで、ここからは感想文を書く詳しい手順について3つに分けてご紹介していきます。
ステップ1 格段に書きやすくなる「感想文メモ」を作る
人間の記憶とは曖昧なものです。感想文を書こうと思っていきなり原稿用紙に向かと、途中で何を書きたかったのか本人も分からなくなりがちです。
そこでおすすめしたいのが予め「感想文メモ」を作って書きたい内容を整理することです。下記に行事感想文と読書感想文それぞれに必要なネタを引き出す項目を挙げてみました。
運動会など行事の感想文に必要なネタ
- ○○の練習で頑張ってきたこと、工夫したことは何か
- 練習で辛かったことは何か
- 練習で励まされたことは何か
- ○○当日の気持ちはどんな感じだったか
- ○○当日で頑張ったこと3つは何か
- できなかったけどできるようになったことは何か
- できて嬉しかったことは何か
- できなくて悔しかったことは何か
- ○○を終えて「ありがとう」を伝えたい人は誰か
- なぜその人に「ありがとう」を言いたいのか
- ○○を通じて親や先生に教えたいことは何か
読書感想文に必要なネタ
- なぜこの本を選んだのか
- 主人公のどういったところが好きか・嫌いか
- 他の登場人物で好きな人・嫌いな人はいるか
- 特に感動したセリフや行動はどこか
- 心に残った場面はどこか
- 自分ならどうするか、どうしてしまうか
- この本から学んだことは何か
- この本をどんな人におすすめしたいか
- この本を読む前と読んだ後で変わったことはあるか
このような具体的な項目をお子さんの前に書き出してあげてみて下さい。そして、各項目を埋めるようにお子さんにメモを取ってもらって下さい。
先ほどお話したように「何を書いたらいいか」が決まっていればお子さんはそれだけ文章を書きやすくなります。少し面倒に感じるかもしれませんが、根気よく書き出すのを手伝ってあげて下さいね。
ステップ2 メモが作れたら曖昧な表現を具体的にする
上のような項目が一覧で書けたら、次は曖昧な表現を具体的にする作業をして下さい。例えば「楽しかった」「面白かった」「感動した」という言葉の前にその時の詳しい状況を書き足していくと分かりやすいです。
・運動会のリレーが優勝できて嬉しかった
⇒練習ではいつも2位か3位だったのに、クラスの皆で前日まで練習して諦めなかったから優勝できて嬉しかった
・主人公が逃げてがっかりした
⇒主人公に「ここでアイツを見返してくれるように頑張って欲しい」と思っていたのに、アイツが出てくると隠れて逃げてしまってがっかりした。
特に子どもは形容詞を使って短い文章にしてしまいがちです。ですが、大切なのはその形容詞で省略されてしまったシーンであることも多いのです。
ですから、深みのある文章にするために気持ちを感じた場面を具体的に思い出せるようにサポートしてあげることが重要です。
「リレーで優勝できなのはなぜだと思う?」「がっかりした時、主人公にどうして欲しいと思ってた?」など具体的な質問を投げかけて子どもに言葉にしてもらいましょう。そして子どもから良い言葉が出たら「そう!その場面を書くんだよ!」「そんな風に感じていたことを書けばいいんだよ!」と励まし、すかさずメモに書き加えていくように指示してあげて下さい。
ステップ3 メモを見ながら原稿用紙に書き、見直す
ここまでできたらあとはメモを見て原稿用紙に書いていくだけです。
メモで書き出したことを全部書く必要はありません。いらないなと思ったところはもちろん削ってOKです。いらない部分を削ればより洗練された文章になります。
また、書きあがったら満足してしまいがちですが、最後は見直しをしましょう。あれこれ指摘する必要はありません。文章としておかしくはないか、誰かを傷つける表現にはなっていないかという点をチェックしましょう。
文才とは「文章になるネタを集める才能」
いかがでしたか?子どもが「文章が書けない」と言うとお母さんはどうしてあげたらいいか分からなくなりますよね。ですが、子どもは「何を書いたらいいか」ということが理解できれば取り組むハードルは一気に下がります。
子どもは、書くのに必要なネタを自分の頭から上手く集められないだけなのです。“ネタ集め”のサポートをきちんとしてあげて練習すれば、感想文は必ず書けるようになります。
私は、ウェブライターをしている関係で普段から文章を書くハウツー本をたくさん読んでいます。これまで新聞記者、作家、ブックライター、ブロガーなど様々なジャンルの人の「文章法」について本を読みました。
そして、その中で文才とは「文章になるネタを集める才能」のことではないかと考えるようになりました。やはり書くことを生業にしている人たちは「ネタ集めの量」が素人とは全く違うのです。
そんな“文才”豊かな人達の努力を本で読んでも、文章とはやはり「何を書くか」ということがはっきりして始めて書き出せるものなのだと思います。
ですから、お子さんが感想文を書けなくて苦しんでいる時は「何を書くか」ということがはっきりするようなアドバイスをして頂けたらと思います。