子どもの健康・発達

「子供が嫌いな食べ物」はどんなもの?食べない理由は本能が避けている?!

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社会福祉学を専攻し、保育士・幼稚園教諭の資格を持つ育児コラムライター。社会福祉学部では「家庭環境ごとの子どもへの支援の必要性」や「北欧各国の福祉と教育」を学んだ知見を活かしコラムを執筆。2人のお子さんを育てながら、執筆の他にハンドメイド作家(タティングレース、イヤリングなど)としても活動中。

「子どもがご飯を食べない」というのは、特に、離乳食期から幼児食期の子どもをもつママからよく聞く悩みです。

一生懸命作った食事を食べてもらえないと、ショックで落ち込んでしまうこともあるでしょう。

どうしてご飯を食べてくれないのでしょうか?

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子供が食べ物を「食べない・好き嫌いをする」原因は“味蕾”にあった!

子どもに嫌いな食べ物があったり、好き嫌いがあるのはただのわがままではありません。実は、生き物として“本能的に避ける機能”があることが大きな原因です。まずはその仕組みをお話していきます。

私たち人間の舌には味蕾(みらい)という味を感じるための細胞があります。味蕾は12歳頃にピークを迎え、その後減少していく細胞です。
子どもは大人に比べて味覚に敏感なのは、この味蕾という細胞が大人より多く存在しているからです。

子どもは大人の何倍も苦味を感じているから嫌いになる。

例えば、コーヒーを毎日飲むという方はこんな風に想像してみて下さい。インスタントコーヒーを入れるとき、いつもはスプーン1杯の粉末を入れているとします。それがもし、2杯、3杯入っていたらいつものコーヒーの何倍も苦くて「こんなコーヒー苦くて飲めない!」と感じると思います。

子どもの味覚というのはまさにこんな感じです。大人にとってはなんともない苦味でも、味蕾が多い子どもはその2倍、3倍苦味を感じているのです。

そうなると大人が何気なく食べている食事も、子どもにとっては嫌いな食べ物になってしまうのです。

子供が好きな食べ物にも理由がある

また、子どもが好き嫌いをするのは他にも理由があります。実は人間は本能的に“甘いもの”と“うま味”があるものを好み、“苦い食べ物”と“酸っぱい食べ物”を避けるようにできているのです。

味覚には甘味、うま味、塩味、酸味、苦味の5つがあります。人間が本能的に美味しいと感じるのは、甘味、うま味、塩味の3つです。

この3つが美味しいと感じるのは人間の活動に欠かせない成分を含んでいるからです。

例えば、子どもはさつまいもやじゃがいも、カボチャ、豆類、ごはんや麺類などを好みます。これは、体を動かすために必要なエネルギーを多く含んでいるので、積極的に摂取しようとしていることが関係しているからです。

<人間が本能的に好む味>

  • 甘味…人間のエネルギー源となる糖類が多く含まれる
  • うま味…人間の体を作るたんぱく質が多く含まれる
  • 塩味…神経や内臓の働きをよくするミネラルが多く含まれる

子どもは本能で“苦い食べ物”と“酸っぱい食べ物”を食べない

一方、酸味や苦味を感じるものは、子どもたちは苦手です。保育園や幼稚園でもピーマンやゴーヤを好き好んで食べる子は稀ですし、トマトや酢の物などを嫌う子どもも多くいます。

これもまた、人間の本能が関係しています。
酸味は“腐っている食べ物”を脳に連想させ、苦味は“体に有害な食べ物”と判断されるので避けるようになっているのです。

<人間が本能的に避ける味>

  • 酸味…腐っているもの、未成熟でお腹を壊す食べ物
  • 苦味…体にとって有害なもの、毒があり生命の危機に関わる食べ物

特に“苦味”はどんな動物でも強く拒否反応を出します。酸っぱい食べ物や苦い食べ物を避けようとするのは、人間が長い年月をかけて獲得した生きるための能力なのです。

大人になると嫌いな食べ物が減る理由

子どもの頃、嫌いだったものでも、大人になると食べられるようになることってありますよね。生姜などの薬味が子どもの頃は苦手だったのに、大人になると平気になったという人もいます。

これには、大きく2つの理由があります。一つは味蕾(みらい)の減少で子どもの頃よりも強く味覚を感じなくなったことです。

先ほどもお話したように、子どもの味蕾は12歳をピークにしてその後は減少していきます。味を感じる細胞の数が減れば味に対して鈍感になるので、酸っぱいものや苦いものも子どもの頃ほど強烈に感じることはなくなります。その結果、大人になると苦手だったものも食べやすくなるのです。

もう一つは食事をたくさん経験することによる“慣れ”です。
私たちは1日3回365日食事をします。年1000回以上の食事をしているので、10年経てば1万回以上の食事経験があることになります。年月が経てばこの経験も多くなるので、本能的に苦手であるものも経験によって体が慣れていくのです。

子供の嫌いな食べ物があるのは、本能的に仕方がないこと

しかし、子どもはそもそも食事経験も少なく、大人よりも味蕾の数があって味を強く感じてしまうのです。ですから、子どもが酸っぱいものや苦いものを嫌うのはある意味当然のことです。

加えて幼児の場合、人間の理性を司る部分が未熟なため、大人よりも本能的に生きています。

そのため「体にいいから食べなさい」「もったいないから食べなさい」などと言われても「嫌だ」という本能的な気持ちにまだ勝つことができません。

一生懸命作ったご飯を残されると、やはり悲しいですし腹が立つ気持ちも分かります。ですが、子どもが大人よりも好き嫌いが強く出てしまう理由もきちんと存在しているのです。

食べないから“好き嫌いをなくす”のではなく、“好き”を増やして欲しい

食事経験が少ない子どもが好き嫌いをすることは、体の正常な反応でもあるので、ある程度仕方のないことだとお分かり頂けたと思います。

では、私がどうして好き嫌いについての克服法の記事を書いたのかというと、それは “好き嫌いをなくす”のではなく、子どもが“好きなものを増やして欲しい”と考えたからです。

例えば、子どもがある程度大きくなってくると「家族で楽しく外食に行きたい」と思うようになります。でも、もし外食で子どもが好きなものが一つもない食事だったら、外食するのは苦痛です。

「ニンジンは嫌い、トマトも嫌い、レタスもきゅうりも嫌い、肉も魚も硬いと嫌」だったらその子はきっと食事をするのが楽しいと思えません。

でも「ニンジンも好き、トマトも好き、私の好きなものがいっぱいある!」と思えたら、大好きな人たちとの外食はその子にとって本当に幸せな時間です。

「食べないなら違うもので代用すればいい」という考えもあると思います。でも好きなものが1つしかない食事と、好きなものが10個ある食事なら、私は後者の方が幸せではないかと思いこの記事を書きました。


子どもの好き嫌いはなかなか克服するのが難しいかもしれません。でも、ある程度仕方がないと割り切りながら、楽しんで克服する方法を考えて頂ければと思います。

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