子どもの健康・発達

子どもが言うことを聞かない!反抗期を前に考えたい親子の境界線

子どもの健康・発達
この記事を書いた人
夏野 新さん【心理カウンセラー】

虐待防止や家庭環境についての専門家。心理カウンセラーの資格を活かしながら「妊娠、出産、育児」といった女性向けのサポートをするための情報を発信しています。2児の子どもを育てながら、2019年には自身の書籍「世界が変わる! アダルトチルドレンの自己観測」を出版し、悩みを抱えるご家庭への問題解決に尽力しています。

子どもが言うことを聞かなくて困る。子どもが手に負えないと感じる。

あなたは、そんな悩みを抱えていませんか?子どもが言うことを聞かないのは、子育てにおける永遠のテーマのように感じられている部分もあるのではないでしょうか。

この記事では、特に小学校中学年から思春期までの間の「反抗期」にあたる子どもたちを対象にして考えます。

「言うことを聞かせるためのテクニック」ではなく「言うことを聞かないのはなぜなのか?」という部分に焦点を当ててお話したいと思います。

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反抗期の子どもに対して「言うことを聞かせよう」と思っていませんか?

どんな方法で接すれば言うことを聞くようになるかを考えるよりも大事なのは、なぜ子どもが言うことを聞かないのかという部分に目を向けることです。

まずは日常の小さなこと、よくある事例を基にして考えていきましょう。

親の視点と、子どもの視点はまったく違う

最初に知っておきたいのは「親の視点」と「子どもの視点」は180度違うと言っても過言ではないということ。

たとえば「今日は雨が降りそうだから、傘を持って行きなさい」と忠告するとしますね。しかし子どもは「傘なんていらない!」と言い張る。このような場面は、ふとした日常にあると思うのです。

親としては「雨が降って傘を持っていなかったらずぶ濡れになるし、たとえ雨が降らなくても念のため持って行くに越したことはない」なんて考えることが多いのではないでしょうか。

では「傘はいらない」と親の言うことを聞かない子どもは、何を思っているのでしょうか。「傘を持って歩くのはわずらわしい。雨が降ったって帰ってから着替えればいい」と思っていたりします。

このときに親はさらに「風邪をひいたら困るだろう。雨の予報なのに傘を持たないで出かけるなんておかしい」という風に思ってしまったりするのですね。そしてそれをガミガミと言ってしまうことも往々にしてあります。

でも、子どもにとってはずぶ濡れになるよりも傘をもって歩くことの方が嫌なのです。大人は、濡れたまま歩くよりも傘を持って歩くほうが快適ですが、子どもにとってもそれが正解ではありません。

親と子はどんな些細なことに対しても、重点を置くところや好き嫌い、快不快というものがまったく異なるということを知っておくとよいです。親にとっての当たり前も、子どもにとっては当たり前でないという認識で子どもを見るほうが子育ては楽なのではないでしょうか。

子どもの言うことを、本当にちゃんと聴いていますか?

子どもに言うことを聞いて欲しいと思う前に、まず親自身が子どもの言うことをちゃんと聴いているか振り返ってみることも必要です。

子どもの言うことをちゃんと聴くとは、どういうことか考えてみてください。子どもとたくさんの時間、会話をすることでしょうか。それとも、真剣に議論することでしょうか。

子どもの話を聴くというのは「子どもと自分自身の違いを理解し、境界線を意識しながら聴く」ことなのだと私は考えています。

たとえば、とっても小さなかすり傷を痛い痛いと言って泣いたり、宿題が嫌だ、学校が嫌だと子どもが何気なく話すときに、どんな風にそれを受け止め、接しているか考えてみましょう。

よくやってしまうのは「そんな小さなことで泣くなんておかしいよ」「そんなこと言ったって、やらないと自分が困るでしょ」という、親目線の返答です。これは、形的には子どもの話を聞いているのですが、理解しようとしていないし、相手と自分は別の人間であるという境界線がない状態です。

親であるの感覚を、子どもに無意識のうちに押し付けてしまっているのです。このようなやり取りをしている親御さんはダメなのだと否定したいわけではありません。親子間では、ついつい自他の境界線を越えて、親の感覚で子どもの話に返事をしてしまうということ。誰にでもあること、うっかりやってしまいがちなことと考えてほしいのです。

反抗期以降の子どもが言うことを聞かないのは、当然の成長でもある

反抗期とは、前思春期と呼ばれる10歳前後から中学生くらいまでのことを指します。正確には小学校中学年から「中間反抗期」と呼ばれるものが始まり、思春期になると第二反抗期に差し掛かります。

10歳の壁という言葉がありますが、子どもは10歳を境に精神的に大きく成長し、非常に不安定な状態になることも珍しくありません。

そんなときこそ、子どもと親のかかわり方を今一度見直してみるとよいかもしれません。親が「こうすべき」と思っていることと、子どもが「こうしたい」と思っていることはまったく別なのです。そこを「普通はこうでしょう」「こうしないと困るでしょう」というように、親の価値観や好き嫌いなどを押し付けるだけで終わってしまうと、子どもは「理解されていない」「信頼されていない」という受け取り方をすることもあります。

親の感覚や視点だけでいくら説明したり、ものごとを教えても、子どもは言うことを聞かないし、それどころか離れていったり心を閉ざしてしまうおそれもあるのです。

当然、危険なことや人としてやってはいけないこと、家族の中でこれだけは大切だと決めているルールなどに反したときは、厳しく言って聞かせることが必要です。しかし、その他のことは、子どもが自分の感覚や好き嫌い、快不快によって決めることです。

親が「子どものためを思って言っているのに!」という感情を抱くこともあるのですが、それが果たして本当に子どものためなのか、ただ自分が子どもに言うことを聞いてもらって安心したいだけなのか……という点は、一度じっくり思い返してみるといいかもしれません。

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