育児と向き合う

子どもの成長を妨げるのは硬い価値観を持った親

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この記事を書いた人
夏野 新さん【心理カウンセラー】

虐待防止や家庭環境についての専門家。心理カウンセラーの資格を活かしながら「妊娠、出産、育児」といった女性向けのサポートをするための情報を発信しています。2児の子どもを育てながら、2019年には自身の書籍「世界が変わる! アダルトチルドレンの自己観測」を出版し、悩みを抱えるご家庭への問題解決に尽力しています。

子どもの可能性を伸ばし、より健やかに育てるためには「親の固い価値観」や「古い考え方」を取り払っていくことが先決です。

さまざまな育児メソッドや、教育プログラムなどがありますが、親自身の価値観や生き方の思想が硬いと、どんな方法を選んでも子どもの可能性を広げることは難しいと考えています。

この記事では、子どもの成長を妨げる、親の固い価値観についてお話していきます。

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子どもの成長を妨げる「固い価値観」とはいったい何?

実は筆者自身、硬い価値観をもちながら長男を10年間に渡って育ててきたという反省があります。もちろん、真剣に取り組んできたという自負はありますが、硬い価値観を取り払うことがどれだけ難しいかということを痛感した10年間でもありました。

硬い価値観とはいったいどのような考え方を指すのか具体例をあげてみましょう。

「べき思考」の価値観

日本人の親の多くは「べき思考」に縛られています。子どもはこうあるべき、親とはこうあるべきなど、家庭内における自分たちの役割や理想などを「こうあるべき」のべき思考によって形作ってしまうことがあります。

また、これは自分たちの家庭の中だけでなく、子どもや親に関わる親族や保育士、教師などに対しても「こうあるべき」という理想を押し付けて批判や期待をしてしまうこともあります。

枠組みやカテゴライズにこだわる価値観

現代人はまだまだ枠やカテゴリーにこだわってしまう人が多いです。性別や年齢などはその最たるもの。男の子だから、女の子だから、子どもだから、それが普通だから、一般的には〇〇だから……という枠組みを作って、その枠から出る子どもを叱ったり、枠に収めるためにコントロールしようとしてしまったりします。

周囲との比較や相対的な基準による価値観

周囲の比較や、相対的な基準を使ったものの見方もまた、子どもの成長を妨げることにつながる場合があります。

「他の子はそんなことしないよ」
「あの子はうちの子よりも優秀だ」
「〇〇ちゃんを見てみなさい」
「うちの子が一番できない」

比較は子どもの発達や成長度合いを確認するために必要なことではありますが、他人との比較を子ども自身に示して「恥ずかしいよ」「情けないよ」というようなネガティブな自己イメージを植え付けてしまうのは、子どもにとって悪影響です。

古い価値観を手放せば、子供はのびのび成長し親のストレスも軽減

現代では、多様性を認め合い、子どもの人権を尊重していくという考え方が広まりつつあります。その中で、他人との比較や枠組み、こうあるべきという固定観念は親子共に苦しくなる原因になっていきます。

子供自身の成長のためである一方、古く硬い価値観が親の育児に対する悩みを大きくさせる場合があります。親が硬い価値観をもっている以上、その価値観に子どもがそぐわないとき、子どもを何とかして自分の価値観に合わせようと必死になります。

これは意識的な行動ではなく、「この子のためである」という愛情だと思い込み、無意識のところで支配してしまうのです。無意識であるため親自身がその価値観の硬さに気づきにくいので、「なぜかうまくいかない」「子育ての悩みが尽きない」といった問題となって表面化します。

子どもは親の支配を受けると反発したり委縮したりします。親自身も、子どもがコントロールできないことに悩みストレスを抱える……。すると必然的に家庭内の空気は悪くなり、本来安全基地である家庭が、子どもにとって窮屈な場所でしかなくなってしまうというメカニズムです。

古い価値観を手放し、子供を伸ばす「コントラスト」の考え方

子どもの成長を促すには、心の基盤である自己肯定感を持たせてあげる必要があります。自分自身にしっかりと価値を感じられるような手助けをするのです。
どんな子でも大切である。ただここにいるだけで価値がある。これが、本来親から子へ与えてあげるの無条件の愛情です。しかし、親自身が無条件の愛情で育っていない場合がほとんどなので、硬くて古い価値観から抜け出すことは難しい場合も多いのです。

人間は本来「コントラスト」であると考えます。コントラストとは、複数のものの視覚的な差や違いを示す言葉。子どもは誰一人として同じケース、性格、能力はありません。どんな行動やどんな特徴も、理由なく存在していいとする考え方です。

良い・悪い、正解・不正解などの二極化ではなく、どんなレベルや位置にあってもそれが我が子であると受け止めること。その多様な人々が集まってできているのが世の中であると考えることは、子育ての分野のみならず親自身の生き方や生活においても、楽になる考え方ではないでしょうか。

親の固い価値観を捨てるには、親の子ども時代を振り返る

親の固い価値観は、一朝一夕に取り払えるものではありません。先に述べたように私自身も自分の硬い価値観によって子育てに苦しんだ経験があります。

そこでいちばん大事なのは「自分を許す」ことです。硬い価値観をもっているということは、親自身がその硬い価値観に沿うために必死になって生きてきた可能性が高いです。それを取り払うには、まずは親が子ども時代の振り返りをし、自分を許す必要があります。

自分は本来どんな子どもであったか、親にどんな風に育てられてきたか、そして何か違和感を覚えたり苦痛に感じたりした経験はなかったか。その点をしっかり深堀して、親自身の自己肯定感を正していくことが何よりも大切であると私は考えています。

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