育児と向き合う

育児ノイローゼに定義はない!悪化を防ぐためのコントールとは

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この記事を書いた人
夏野 新さん【心理カウンセラー】

虐待防止や家庭環境についての専門家。心理カウンセラーの資格を活かしながら「妊娠、出産、育児」といった女性向けのサポートをするための情報を発信しています。2児の子どもを育てながら、2019年には自身の書籍「世界が変わる! アダルトチルドレンの自己観測」を出版し、悩みを抱えるご家庭への問題解決に尽力しています。

育児ノイローゼに、あなたはどのようなイメージを持ちますか?何も手につかなくなって呆然としてしまうことでしょうか。それとも、うつ病と診断を受けることでしょうか。

育児ノイローゼには明確な定義はありません。もしかして、自分は育児ノイローゼなのかも?と思ったとき、それがあなたにとって「ノイローゼ状態」なのかもしれません。

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育児ノイローゼの定義とは?

育児ノイローゼには定義や診断基準などありません。しかし、多くの母親が「ノイローゼというほどでもない」「もっと大変な思いをしている人もいる」などと理由をつけて、自分を甘やかすことができずにいます。

ネット上には「こんな症状があったら要注意!」というチェックリストの様なものがたく

さんあります。そのチェックリストの内容は、どれも完全に無理をしすぎた状態ばかり。

・無表情
・何も楽しいと思えない
・話しかけても反応がない
・パニックや思考力の低下
・注意力の欠損
・不眠や睡眠障害
・家の中に閉じこもる

このような状態になってから、育児ノイローゼを自覚するのでは遅すぎます。大事なのは、定義や診断基準にこだわることではなく、早い段階で本当の自分を取り戻すことです。

精神的に不安定だと感じたら、それは育児ノイローゼです

心配ごとや困りごとが多く、精神的に不安定だと感じるのであれば、それは育児ノイローゼだと思って構いません。ノイローゼという言葉は、とても深刻なイメージがあるため、既に精神的に壊れかけている人に対し「自分はまだそんなにひどくない」と思わせてしまうことがあります。

これは育児ノイローゼに限ったことではありません。うつや、精神疾患、仕事での悩み、家庭環境の悩みなど、全ての心の問題に共通しています。
「自分はそこまで過酷な環境ではないから、まだ頑張るべき」と思ってしまう人が多すぎるのです。

子供を怒鳴る・イライラが抑えられないのもうつ・ノイローゼのひとつ

うつやノイローゼなどと聞くと、完全にやる気を失って呆然としてしまう状態や、ベッドから起き上がれず、最低限のやることもできなくなる……というイメージを持つ方も多いのでは。単純に、子供にイライラしたり怒鳴ったりするのと、育児ノイローゼは別ものだと感じてしまう人もいます。しかし、ノイローゼという言葉が連想させる「放心状態」のような状況は、末期症状です。大事なのは、育児ノイローゼの定義を追うことではなく、早い段階で育児環境を改善したり、母親自身の心をケアしたりすることなのです。

育児ノイローゼ状態でも、日常を送っている人が大半

育児による心身のストレスが溜まり、精神的に不安定になっていても「自分はまだ大丈夫」「育児は誰でもつらいものだから」と、がまんしながら日常を送っている人が大半です。日常生活が何とか送れている限り「自分はまだ動けているから、ノイローゼではない」と感じてしまいます。真面目な人、自分に厳しい人ほど、自分を甘やかしたり休んだりすることが苦手なものですよね。日常の育児や家事ができなくなってからでは遅いのです。多くの人に、育児ノイローゼが、自分のすぐそばまで迫っていることや、既に片足を突っ込んでいる人が多いことを自覚してほしいです。

どうやって育児ノイローゼを脱すればいいの?

このままでは自分は壊れる……そう思ったら勇気を出して、誰かに助けを求めたり、気持ちや現状を話したり必要があります。本当に子育てを楽しむには、一時的に休んだり気分転換ンをしたりすることだけではなく、自分の考え方を根本から変えていくことも必要です。しかし、ここがもっとも難しいところであることも事実ではないでしょうか。

家事や育児に対しての「譲れないもの」を捨てる

あなたが、家事や育児の中で大事にしていることは何でしょうか?

・部屋をキレイに保つこと
・身なりやファッションなどを美しく保つこと
・毎日栄養バランスの良い食事を手作りすること
・子供へのしつけ
・夫の前でもよい妻でいること
・毎日決まったリズムで規則正しく生活すること

このように、育児や家事の中で大事だとされていること、こうあるべきだと思っているもののほとんどは「独自のこだわり」です。厳密にいえば、やらなくても生活に支障はないし、命の危険もありません。家庭の中の「こうありたい」「こうすべき」という固定観念や理想が強ければ強いほど、育児は苦しくなります。

子育てに悩みがない人に限って「洗濯ものなんて、ピンチに干してあるものを次の朝着ればいいのよ。」「昨日は何にもしないで、ずっとドラマ見ちゃった。」「掃除なんて適当でいいんだよ。」といいます。これを聞いて「ダメな人だ」「私はそうなりたくない」と思う人も、多いことでしょう。しかし、実際には細かいことを気にすれば気にするほど、自分が苦しくなるのです。

本当に大事なことは、きちんと暮らすことではなく「笑っている時間」や「自分の欲求のまま過ごす時間」を持つことです。理想を目指して頑張るから幸せな家庭になるのではありません。自分の欲求が満たされて初めて、絵にかいたような温かくて素敵な家庭ができるのです。

家族・他人に助けを求める

人に頼ることが苦手な人は、育児ノイローゼになりやすいといえます。家族や他人に手を貸してほしいと言えない人や、悩みや愚痴を話すことを躊躇してしまう人は、責任感が強く、人に弱みを見せるのが苦手です。

実は、育児ノイローゼから育児放棄・虐待などに発展してしまうケースの中には、母親自身が自分のダメなところを人に見せられず、他人に助けを求めることができなかった人が非常に多いのです。

子供と自分を守るためには、言いにくいことやカッコ悪いところを正直に人に話す勇気が必要になります。子供を預かってほしいと、誰かに頭を下げる勇気も必要です。そして、本当は頼みたくない人に頭を下げなければならないこともあるでしょう。何も言わない人、強そうに見せている人の裏を読んで、手を貸してくれる人はめったにいません。

育児ノイローゼと夫との関係

子育ての悩みの裏には、必ずといっていいほど「夫婦間の問題」が隠されています。母親がつらいとき、夫が何も手を貸してくれないことや、夫が妻を大事にしないことなども、育児ノイローゼの大きな原因になります。

そして、育児疲れやワンオペ育児で心を壊してしまう母親の多くに「夫への協力を頼めない」「夫に正直な気持ちを話せない」という背景があります。夫が自分勝手で、パワハラのような発言をする場合もあるでしょう。逆に妻が「夫に迷惑をかけてはいけない」「心配をかけてはいけない」と、ここでもまた弱みを隠してしまうパターンも少なくありません。

夫がどんなに激務でも、出張が多くても、ふたりの間できちんとした意思疎通ができていれば、一緒に対処法を考えることができます。

・お金をかけてでも家事代行やシッターを使う
・便利な家電を購入し、導入する
・夫が仕事の調整をしてくれること
・夫が実家や親戚に協力要請をしてくれる
・ただただ妻の話を聞いて、抱きしめてくれる

どんなに忙しくても、夫婦間に溝がなければこれだけのことができます。それができないのは、お互いが思っていることを話し合わないことや、気持ちが離れているためです。何もできなくてもいいから、夫が妻の話を聞いて「頑張っているね」「ありがとう」と言ってくれるだけでも違います。気持ちの行き違いや溝ができてしまうと、今後も平行線どころかどんどん離れていってしまうもの。育児ノイローゼの根本原因は、最終的には夫婦間のすれ違いなのかもしれません。

ショートステイやシッターサービスの活用

保育園のショートステイや、シッターサービスを利用したことはありますか?最近では「育児に疲れたらこのような行政や民間サービスを積極的に利用しましょう」という声掛けもされるようになりました。実際に、ショートステイの利用条件には、しっかりと「育児疲れ」「育児不安」「心身の状態により養育が困難な場合」と定められています。

しかし、実際に自分か使う立場になると躊躇してしまうことがとても多いのです。それは「育児疲れはやむを得ない事情ではない」という固定観念や、周囲の視線や反対意見などに原因があります。

・仕事
・就労訓練
・2人目以降の出産
・病気による入院
・冠婚葬祭や出張などの長期外出

このように、やむを得ない事情とされているものは「大人としてやるべきこと」であったり、お金を生み出す仕事のためであったりと「生産性」が重視されてしまうことが多いと感じます。

すると、世の母親たちは「自分が休むために子供を預けるなんておかしいのでは」「育児疲れはやむを得ない事情ではない」と判断してしまうのです。また、自分のために子供の環境を変えることや、子供にさみしい思いをさせることに更なる罪悪感を覚えることも。そして、結果的にこのようなサービスを利用しないまま、状態が悪化することも往々にしてあります。

実家や夫に、何の躊躇もなく甘えられる人ばかりではありません。人に頼ることが苦手な人、気軽に頼れる人がいない人のためにこそ、このような制度が設けられています。勇気を出して、自分を休ませるための方法を考えてみてほしいです。

育児ノイローゼはどこから?という基準を捨てる

育児ノイローゼって、どこから?どんな状態になると、育児ノイローゼと言ってもいいの?このような疑問は、今すぐ捨ててほしいです。自分はノイローゼなのかもしれない、もしくはこのままではノイローゼになるかもしれない。そう思ったときが、限界値だと考えましょう。

どんな人も、明るく幸せな家族生活を送りたいはずです。それを失う前に、誰かに助けを求め、家事や育児に手を抜く方法を考えてほしいのです。
「このくらいでつらいと言ってはいけない。」
「ワンオペ育児なんて、どこの家庭でも行われている。」
そんな風に自分に厳しくすることは、決して家庭円満にはつながりません。あなたがつらいと思ったときが、治療や対処のはじめどきなのです。

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