保育園や幼稚園に通い始めると、習い事を始める子が増えてきて、自分の子供も何か始めるべきか悩むこともありますよね。
「子供の習い事って何歳からするのかな?」
「周りの子はもう通い始めてるけど、どうしよう?」
「やっぱり早くから通わせた方が伸びるの?」
周りの子どもを見てそう言ったことを考えてしまう事もしばしばあると思います。
特に最近は早期教育という言葉があるほど、幼児向けの習い事や教室が充実しています。
しかし、何かを習わせる以前に大切にしなければいけない事があることをご存知でしょうか?
「習い事は必要なのか?」
「何歳から始めればいいのか?」
「どんな習い事なら意味があるのか?」
こんな悩みを持っている方にむけてお話しします。
習い事を始める以前に、知っておきたい大切な“レディネス”という考えを一緒にご紹介していきたいと思います。
習い事始めるタイミングは小学校入学前がなんと5割!
ある調査によると、習い事開始時期について次のような調査結果が出ています。(※1)
子供の習い事を始める時期は「小学校入学前」が約5割。また、習い事を始めたきっかけについては「親の意向」が6割を占め、意向の内容で一番多かったのが「体力づくり・運動能力向上のため」
調査結果の内容から見ても、小学校入学前から親の意向によって習い事を始める子が半分を占めているということが言えます。
幼少期の習い事は必要ない?
この調査結果を見ると「やっぱり習い事始めた方がいいんじゃ…」と思われるかもしれませんが、もっと大切なことを忘れてはいけません。
それは「早期教育によって本当に子供の才能や能力が適切に開花したか」ということです。
この点を見落としてしまっては親の意向でただ始めただけで子供自身が「楽しくない」「面白くない」「上手くできない」となった時に習い事を辞めてしまう子もたくさん出てきます。
もしも、習い事を始めるなら「子供が楽しいと感じて成長できるもの」「子供の能力や才能を適切に伸ばすもの」の両方が揃っている方がママやパパにとっても嬉しいですよね。
では、ここからは早期教育についていくつか注目して頂きたいことをご紹介していきたいと思います。
子供の運動機能が整ってなければ、習い事は必要ない
「保育ナビ」2014年2月号フレーベル館のとある記事で、日本のトップアスリートは幼少期に一日に3時間以上外で遊んでいたという記載がありました。
発達理論の提唱者であるピアジェやモンテッソーリも共通して幼少期の運動についての重要性を主張しています。
幼少期の子供というのは動くことが大好きです。「ちょっとじっとしてなさい!」と何回ママが注意しようが、あっちこっちへ走り回り周りの大人達を笑顔にさせてしまうほど元気に動き回っています。
子供はそれだけ運動を欲しており、運動することによって多くを学び習得しています。
「じゃあやっぱり運動系の習い事をさせてもいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、ここで考えて欲しいのは、習い事をする以前に必要な動きを獲得しているかということです。
お箸を持たせる以前に、お箸を持たせる手の指の力が育っていなければ上手に使いこなすのは難しいように、何か楽器をさせるにしても運動をするにしても、それに必要な基本的な体の動きを習得していなくてはいけません。
また、運動は思考や言語の発達にも大きな影響を及ぼすと多くの研究者が実証しています。アメリカの医学者リチャード・E・スキャモンは人間の脳と神経の発達は6歳頃までに大人の90%に達すると述べているほど幼少期の運動はとても重要です。
ですから、習い事をさせることに満足してしまって、幼少期に必要な様々な体の動きの習得を怠ると、返って子供の運動能力や脳の発達に偏りが出てしまう可能性もあります。
習い事は「何歳から」ではなく「環境」が大切
「でも、トップアスリートと言われるような人たちはやっぱり幼少期からその競技をしているんじゃないの?」と疑問に思うママも多いはず。
ですが、結論から言うとトップアスリートは必ずしも幼少期からそのスポーツを選択していたとは言えません。
たしかに若くから活躍している選手の中には「3歳からそのスポーツをスタートした」といった幼少期の話も多くありますが、注目して頂きたいのは幼少期で始めた選手の「その競技を始めるにあたっての環境の良さ」です。
霊長類最強と呼ばれたレスリングの吉田沙保里選手は、お父さんがレスリング教室を開いていて教えるプロでもありましたし、体操の内村航平選手はご両親も妹さんも体操経験者という体操一家です。
また、10代で活躍する平野美宇選手も両親が元卓球選手、同じく張本智和選手のご両親も元卓球選手です。
このようについつい「○歳から始めた!」ということに気持ちが取られてしまって、その選手の恵まれた環境には意外と目がいっていない方も多いのではないでしょうか?
ですから、同じように幼少期からスポーツを始めたとしても子供の能力を適切に伸ばせるような環境や家族がそばにいなければ、トップアスリート級に育て上げるというのはとても難しいことなのです。
過度の習い事は子供の成長阻害を起こすので必要ない
また最近では、幼少期から特定のスポーツをさせることについて警鐘を鳴らす調査結果も出ています。
筋肉や骨格が未発達な子どもは、繰り返しの動作によって障害が引き起こされる可能性が成人に比べて高い
と専門化が述べているケースもあります(※2)。日本では幼少期から特定のスポーツを長く継続するような風潮が強いので、こうした怪我が非常に多いのです。
これに対して、欧米諸国の選手は幼少期に様々なスポーツを経験させることが一般的です。
様々な運動機能を鍛えることによって、体の一部分に負荷がかかることを軽減させ、怪我をしにくくなります。
結果として長くスポーツを続けることが可能になります。これらを踏まえても幼少期に必要なのは「運動のバランス」であり、早ければ早いほど才能が伸びるとは言えないのです。
子供に習い事が必要になるタイミング
多くの習い事は一度始めると入学金を払ったり、教材を購入したり、道具を購入したりするので「辞めにくいシステムになっている」いるため、一度始めてしまうと親の方も必死になってしまいます。
ですが、子供の発達には個人差、そして一定の順序があります。
心理学用語の中に “レディネス”という言葉があるのはご存知でしょうか?
レディネスとは「心身の機能がある行動や知識を習得できる段階まで発達し、学ぶ準備が整った状態のこと」を言います。
絵を描くにしても、楽器を弾くにしても、スポーツをするにしても“レディネス”が整っていなければ子供の負担になってしまいかねません。
先にも述べたとおり、お箸を握る力がないのに、お箸を上手く扱うことはできません。大人はやれば上手くなると思って何度もやらせようとしますが、結果的に子供はできないと投げ出してしまいます。
真面目で一生懸命なママほど「今これをしておけば後できっと楽になるから!」「せっかくここまでやったから頑張って!」と必死になってしまう気持ちは痛いほど分かります。
ですが、子供の発達段階に合ったものをさせることによって、初めてその子の成長に繋がることを知っておきましょう。
もちろん、お子さん自身が「やりたい」と言ったらやらせてあげてもいいとは思いますが、早く始めても発達段階に合っていないかもしれません。
十分な集中力が育ってなければしっかりと取り組むことも難しくなります。
親が「ちゃんとやりなさい!」とお尻を叩くくらいなら「習い事は遅く始める方がスタートもスムーズでちょうどいい」くらいに構えておいた方が子供にとってもママにとってもベターではないでしょうか。
「将来のための習い事」は必要ない
その他にも「大人になったら役に立つ習い事をさせたい」「私が英語で苦労したからそこを苦労させたくない」そういう気持ちをお持ちのママもいらっしゃると思います。
それで、何か目標に手が届かなかったことや、挫折した経験をお持ちであれば子供には繰り返したくないというお気持ちも分かります。
ですが、例えば「英語を話せるように」と英会話教室に通わせても子供たちが20歳になるころにはAIによる翻訳機能が発達して英語を話せる技術自体が必要なくなるかもしれません。
計算がいくら速くなったとしても何億と通りものデータを暗記するコンピューターの速度にはかないません。
人間にミスが出やすいことというのはこれからの時代AIやコンピューターが担っていく時代に突入しています。
ですから、安易に大人が「これは将来役に立つ!」と習い事に通わせたとしても本当に役に立つかどうかというのは誰にも分からないのです。
小学3年生からなら習い事も意味がある
では、こういったAIやコンピューターが仕事を担っていく時代に、子供たちが習い事をする域はあるのでしょうか?
自己調整能力がつく小学三年生頃であれば、習い事も意味が出てきます。
子供自身が目指すべき目標を決め、習い事を選択できるようになるからです。
それは今盛んに研究されている「自己調整学習力」とはなんでしょうか?
「自己調整学習力」とは大きく分けて下記の3つがあります。
- 動機づけ…その行動をするモチベーションのこと
- 学習方略…学ぶ方法を自分で考えること
- メタ認知…今の自分がどのくらいできるかを把握すること
1つ目は「以前の自分より上手くなりたい」などモチベーションを指す「動機づけ」。
2つ目は「どうやったら上手くできるかな?」「集中できないからどうやって気分を切り替えようか」と考える「学習方略」。
3つ目は「今、自分はどのくらいできているかな」と自分のレベルを分析する「メタ認知」という力です。
この3つの力を総称して「自己調整学習力」と呼んでいます。
もう少し噛み砕いて説明すると自己調整学習力とは「必要な時に必要な力を自分自身で獲得していく力」です。
例えば、ピアノを習うなら「この曲を弾けるようになりたい」「どうやったら上手く弾けるかな?」「以前の自分と比べて上手くなっているかな」ということが自分で考えられるようになること。
また、英語を習うなら「外国のお友達と話せるようになりたい」「発音がイマイチで通じないけどどこを練習しようかな」「今どのくらいなら外国の人と話ができるかな」ということを考えていく力です。
この能力は幼少期には未発達の段階で、おおむね小学校3年生くらいから全ての力が揃い始めます。
このことから考えても幼少期に無理に習い事をさせる必要はないことがお分かり頂けるかと思います。
習い事は何か特定の技術を習得するためだけでなく「子供が自分で考えて行動するために習わせる」方がこれからの時代を生きていく力になります。
この力があれば、どんなに行き詰まりや失敗や挫折をしたとしても自分の力で考えて生きていくことができるからです。
人間の代わりにAIやコンピューターに奪われる時代になるからこそ、この能力を養うことがこれから習い事をさせるママの目標とするのが良いのではないでしょうか。
幼少期は習い事よりも「考える力」を育む
よくテレビでは「たった3歳で大人顔負けの天才少女!」や「5歳で既にトップピアニスト!」といった幼少期から才能を開花させる子ども達をもてはやす番組がたくさんあります。
しかし「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎればただの人」という言葉もあるように、小さな天才達が大きくなってからも才能を伸ばしていけるかどうかは全くの未知数です。
ですから、そういった周りの目や風潮に流されないという姿勢も大切にして頂きたいと思います。
特にこれからの時代は先にも述べたように「必要な時に必要な知識を自分自身で獲得していく力」=「自己調整学習力」が重要になってきます。
もし、お子さんを習い事に通わせるか迷った時は頭の片隅にでも今回述べたことを置いてみてください。
子供が幼少期のうちは、習い事よりも「考える力」を養う方がよいです。
おすすめなのは子供のペースで取り組める通信教材です。こちらも参考にしてみてください。
▼人気記事
※1「子供の習い事に関する意識調査」結果
https://www.bandai.co.jp/kodomo/pdf/question252.pdf
※2幼児期から始めればスポーツの才能は開花するか
https://www.waseda.jp/inst/weekly/academics/2016/06/24/7927/