育児と向き合う

大人になっても親が嫌い?親に感謝できない人はたくさんいる。

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この記事を書いた人

虐待防止や家庭環境についての専門家。心理カウンセラーの資格を活かしながら「妊娠、出産、育児」といった女性向けのサポートをするための情報を発信しています。2児の子どもを育てながら、2019年には自身の書籍「世界が変わる! アダルトチルドレンの自己観測」を出版し、悩みを抱えるご家庭への問題解決に尽力しています。

あなたは、大人になっても親が嫌いであることを後ろめたく思っていませんか。

それは、一般的な感覚として「大人になって社会を知ると、親のありがたみがわかるようになる」「自分が親になってはじめて、親の気持ちがわかる」という一般的なイメージがあるためではないでしょうか。

もちろん、大人になったり、自分が親になったりして新しく見えてくるものはあります。しかし、それと親に対する感謝や、親を好きと思える気持ちは別にして考えなければなりません。

この記事では、大人になっても親が嫌いなあなた、そして親を嫌ってしまう自分にも嫌悪感をもってしまう方へ向けてお話をしていきます。

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「大人になっても親が嫌いなのは、未熟だから」という大誤解

いつまでも親に感謝できず、嫌い、憎いなどと思ってしまうのは、まだ人として未熟であるという声もよく聞きますが、それは大きな誤解です。

産んで育ててくれただけでも感謝しなくてはいけない?

よく言われるのが「産んで育ててくれたんでしょう?感謝しなくちゃ」という言葉。「親がいない人もいるんだから、親がいるだけありがたいと思うべきだ」と言う声も多いです。

自然と親に感謝できる人や、親を心から好きだと言える人は、ごく自然な愛情をもらっていて、つらい境遇やそこで産まれる複雑な感情を体験していません。

体験したことがない問題について「感謝すべき」「嫌いになってはいけない」などの助言やアドバイスは聞き入れる必要はありません。

★実際に体験した人にしかわからない問題に対し、一般論で語る周囲の声をそのまま自分自身に当てはめる必要はないのです。

親に感謝できない自分が嫌だと思ってしまう?

親に感謝できないことや、大人になっても親が嫌いだと思ってしまうことに対して、いちばん嫌悪感を抱いているのは自分自身である場合もあります。

私自身、暴力や暴言、過干渉といったさまざまな問題を経験しています。成人したころ、子供を産んだ頃、親元を離れて十数年経った頃……何度も「親に感謝したい自分」と葛藤しました。定期的に「親に感謝できるかもしれない」「親を好きと思えるかもしれない」という気持ちが芽生える瞬間があります。

しかし、それと同じかそれを上回る頻度で、嫌な思い出やひどい状況が思い起こされます。

誰でも、親に心から感謝できる自分でありたいはずです。しかし、頑張っても頑張ってもそれができないため「自分は未熟なのかもしれない」という自責の念に駆られることもあります。

大人になっても親が嫌いな自分を責めてしまうのはなぜ?

いい歳になっても、親に対する思いや嫌悪感をもってしまうことで、さらに自分に自信をなくしてしまうこともあります。そこには「普通は、大人になったら親に感謝できるものだ」というぼんやりとした普通の概念があるためではないでしょうか。

多種多様な人がいるのに、普通の概念はひとつしかないから

世の中には本当に多種多様な人がいて、さらにその多様な人が家庭という集団を作って暮らしています。しかし、その一方でまだまだ「普通」というひとつの枠があり、それに当てはまらないケースにNGのレッテルを貼ってしまう人の数も多いです。

普通は親に感謝できるものだ、普通は大人になれば親と和解できるものだ……といったぼんやりしたイメージが、普通の枠から出た人を苦しめてしまいます。

血のつながりを重要視しすぎているから

血がつながっていることは、個人的にそれほど重要と考えていません。実の親子だから何をしてもいい、愛情があれば何を言ってもいい……と、血のつながりに甘んじて、人の尊厳や距離感を間違えてしまい、結果的に「いつまでも理解し合えないまま」という家族がとても多いためです。

しかし、一般的な感覚としてはまだまだ「血のつながりは大きい」「親子の絆」といった目に見えない繋がりは絶対的だと錯覚している部分があります。

目に見えない繋がりを重要視していると「親子なのだからわかり合うべき」「家族には感謝できて当たり前」という実体のない普通にとらわれてしまうのです。

実の親でも、血がつながっていても、あなた自身が「嫌い」「憎い」と思うその感情は認めてあげなければなりません。親子の間に何があったのか、子供の頃の自分は何を感じながら生きていたのか、知っているのはあなた自身だけです。

だからこそ、自分で自分のつらさや親への怒りを認めてあげなければなりません。心で自分が感じたことはすべて事実であり、正解不正解などありません。

大人になっても親が嫌いな人は、実はたくさんいる

大人になっても、自分の親を嫌いだと思っている人はたくさんいます。

でも、そのようなことを人前で話すような機会はほとんどなく、親への不満を口にするのは大人として恥ずかしいという考えから、心に秘めている場合が圧倒的に多いです。

「親に感謝しています」「お母さんを尊敬しています」「お父さんの強さを見習います」というポジティブな意見は、場所を選ばずに声に出せる話です。しかし、親が嫌いで困っている人は、それを吐き出す場所がないので一見少ないように見えるだけなのです。

大人になっても親が嫌いなのは、あなた自身が未熟なわけでもわがままなわけでもありません。多くの人が内に秘めているため、自分にとっての普通を認めてもらう場所がないだけなのではないでしょうか。

まずはわかりやすく、評価の高い書籍をご紹介します。体験談が漫画で描かれており、どうやって乗り越えてきたのかがわかりやすく書かれています。

菊池 真理子 (著)

大人になれば、親も子もそれぞれの人生を歩んでいます。頑張って好きになろうと必死になるよりも、ほどよい距離感や、お互い負担にならない関係性を作っていくことの方が大切だと私は考えています。