温かい絵と5歳の女の子の一生懸命さがたっぷり詰まった『はじめてのおつかい』という絵本をご存知でしょうか。
筒井頼子さんが書いた作品で5歳の女の子がお買い物という何気ない日常の風景の中で成長する姿が印象的な作品です。
今回は『はじめてのおつかい』の魅力を保育士の私から詳しくご紹介させて頂きます。
『はじめてのおつかい』の作者はどんな人?
絵本の作者は筒井頼子さんです。筒井さんは1945年東京生まれですが、戦時中ということもあり、家族ですぐに秋田に疎開されています。
その後、埼玉に移住して埼玉県立浦和西高校卒業後、コピーライター養成学校に通い、広告会社に就職しました。
筒井さんは結婚後、専業主婦になり、子育てをしながら絵本の執筆を開始され、1976年に林明子さんと『はじめてのおつかい』を出版しました。
その後も2人は『おでかけのまえに』『あさえとちいさいいもうと』『いもうとのにゅういん』などで共作されています。
『はじめてのおつかい』絵を描いたのは?
一方、絵を担当されたのは林明子さんです。林さんは1945年東京都生まれで、横浜国立大学教育学部美術科卒業されています。
自分で生活費を稼ぐために、大学の先生の紹介を経て真鍋博氏のアトリエでアルバイトをし、その後そのアトリエに就職しました。
アトリエでのアシスタント経験の後、1973年に初めての絵本『かみひこうき』を出版し、その後、筒井頼子さんと共作で絵本を手がけた他、ご自身で描いた絵本も多数あります。『おててがでたよ』『くつくつあるけ』『こんとあき』『まほうのえのぐ』など絵本好きな方なら一度は目にしたことがある作品ばかりです。
また、余談ですがジブリ映画の原作となった『魔女の宅急便』(角野栄子著)の挿絵も林さんが描いています。
原作を読み込み、甥っ子や姪っ子の様子を観察して描いていたと言う林さんの絵は優しくやわらかな作風が特徴的です。
絵本『はじめてのおつかい』の対象年齢、あらすじ、みどころは?
ここからは絵本『はじめてのおつかい』の対象年齢やあらすじ、みどころなど作品について詳しくご紹介させて頂きます。
『はじめてのおつかい』の対象年齢は?
出版元である福音館書店の公式HPを確認したところ「読んであげるなら3歳から」「自分で読むなら小学校低学年から」と記載されていました。
実際、筆者の4歳半の娘は読んでもらうのも、自分で見ることも非常に楽しいようで、図書館で借りてくると頻繁に読んでいます。
あとは意外だったのですが、2歳になったばかりの息子もこの絵本が好きで、私のところによく持って来ます。お話も最後まで聞けていることが多いです。
ですので、絵本が好きな子であれば2歳くらいから読んであげても喜んでくれるのではないかと思います。
『はじめてのおつかい』のあらすじ
ある日、みいちゃんはお母さんに頼まれて赤ちゃんのために牛乳を買いにいきます。自転車にベルを鳴らされたり、坂道で転んだり、お金をなくしてしまったり…お店までの道はドキドキの連続です。
そして、やっとのことでお店に着いたのにお店には人がいません。みいちゃんは「ぎゅうにゅうくださーい」と一生懸命声を出しますが…と全部話してしまいたいですがこれくらいにしておきます。
牛乳を買うために一生懸命頑張るみいちゃんの姿はこちらも応援したくなります。
『はじめてのおつかい』読み聞かせの所要時間はどれくらい?
筆者が実際に読んでみて「約5分」でした。1ページごとの文字量は多くはないので寝る前のちょっとした時間でも読みやすいと思います。
『はじめてのおつかい』のみどころ
牛乳1本を買いに行く途中で、5歳の女の子が色々な不安に立ち向かって頑張り、成長する姿がとても印象的です。個人的に一番おすすめなのは、無事に牛乳を買えたシーンです。お恥ずかしい話ですが、筆者自身は我が子の成長に重ねて泣いてしまったこともあります。
また、林さん優しいタッチの絵が5歳の女の子の愛らしい雰囲気にピッタリです。甥っ子や姪っ子をモデルに描いているというみいちゃんの表情は、生き生きとして、見ているだけで温かい気持ちになります。
絵本の中には作者二人の名前が描かれた看板や掲示板があるなど林さんの遊び心も光っています。機会があればぜひ探してみて下さいね。
『はじめてのおつかい』はこんな子におすすめ
家や幼稚園、もしくは保育園でお買い物ごっこやお店屋さんごっこをして遊んでいる子は楽しく読んで頂けると思います。
あとは、家事やお母さんのお手伝いが好きな子、小さい子や兄弟の世話が好きな子にもおすすめです。
絵本『はじめてのおつかい』は信じて見守ることを教えてくれる作品
今回は絵本『はじめてのおつかい』について詳しくご紹介させて頂きました。
筒井さんと林さんの共作の作品は他にもあるのですが、大人に導かれるというよりは子どもが子どもなりに頑張り、失敗しながらも成長していく姿が印象的です。
私もお二人の作品をよく読みますが、子どもを導くだけでなく、「子どもを信じて見守ることも大切」と気付かされます。
特に『はじめてのおつかい』の対象年齢の3歳前後は、子どもが自分でやりたいという気持ちが出てくる時期です。
「子どものやってみたいという気持ちを後押ししたい」と思うことがあればぜひ読んでみて下さい。
参考資料)
https://www.fukuinkan.co.jp/blog/detail/?id=1
(福音館書店の公式Webマガジン ふくふく本棚)
温かな絵本に脂汗の日々 「はじめてのおつかい」の秘話(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASL7B5JJNL7BUKJH00N.html