話を聞いていない子どもへの対処法に困っていませんか?
子どもに何度同じことを言ってもすぐに忘れられたり、繰り返し話をすることに疲れてしまったりしている親御さんは少なくありません。
一般的には、話を聞かない子どもは「困った子」という印象を受けるのですが、果たして本当にそうでしょうか。
この記事では、話を聞かない子どもへどのようなアプローチをしていけばよいかを、根本的な部分から解説します。
話を聞かない子どもは「困った子」ではありません
「大人の話をしっかり聞きましょう」というのは、私たち大人も昔から言われ続けてきたことです。
しかし中には、耳で聞いたことを行動に移すのが苦手な子どもがいるということをご存じでしょうか。
例えば、こんな様子を思い浮かべてください。食事の用意ができたので、お母さんが「早く手を洗ってきなさい」と声をけたとします。
子どもは話を聞いているのかいないのか、から返事をしてテレビに夢中になっている。何度も声をかけてようやく手を洗いに行く……こんなことは、子育てのワンシーンとしてよくある光景です。
もうひとつの例をあげてみましょう。親子が静かな部屋で、大事な話をしているとします。
親御さんが一生懸命子どもに説明したり、質問したりしているのに、子どもは手いたずらをしたり、きょろきょろしたり、机に突っ伏してしまう。
そしてそんな様子を見た親御さんは「人の目を見て話を聞きなさい!」なんて怒っている光景。なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
このような「話を聞いていない様子」は、耳から聞いた情報を頭の中で少しの間記憶しておくことや、情報としてつなげる力が未熟なために起こっている可能性があります。
話を聞かないのは、子どもの聞く力が成長段階にせいかも?
子どもは、耳から聞いた言葉を情報としてつなげる力が未熟な場合があります。
未熟と言っても、あくまでも成長段階であるという考え方で、決して異常ではありません。だからこそ「よくあること」として多くの親御さんが悩んでいるのです。
よく「右から左に抜けている」という表現をされることがありますよね。
これは言葉の通りで、聞こえているけれど情報として処理し、行動につなげることが難しいということなのです。
耳からの情報を処理するのは「ワーキングメモリ―」という能力
耳から入ってくる情報は、一時的に脳内で記憶しておく必要があります。
およそ20~30秒程度の間、聞いた情報の記憶を保持し、どのような言動につなげるかを判断します。
この一連の流れが滞りなくできることこそ、大人のいう「話を聞いている」ということになるのです。
耳からの情報を一時的に保存して処理する力のことをワーキングメモリ―といいます。
・大人の指示を聞く
・支持された順番通りに動く
このようなことがスムーズにできるためには、ワーキングメモリーが発達している必要があるのです。
ワーキングメモリ―と子供の様子を解説
子どもを取り巻く環境は、ほとんどが耳からの情報になります。親や先生が、声で指示を出したり説明したりすることが圧倒的に多いですよね。
ワーキングメモリ―の発達具合は子どもによってまちまちですが、耳からの情報処理が苦手な子はたくさんいます。
特に男の子の場合は、一度に複数の物事を同時進行するのが苦手な子も多いです。
テレビを見ているときに親御さんが話しかけても、声を情報として処理できないので指示に従えないこともあります。
授業中に先生が「今から、体育館に移動します。体育館についたら出席番号順に整列して、体育すわりをして静かに待ちましょう」などと一度にたくさんの指示を、言葉だけで説明します。
耳からの情報処理が苦手な場合、指示内容をすぐに忘れてしまい「話を聞いていないかったのか」と叱られることもたくさんあるわけです。
さらにいえば、話を聞くということに集中しすぎて肝心の話の内容が頭に入らないこともあります。
「話を聞くときは人の目を見るように」というマナーを教える場合も多いですが、人の目や顔を見ると視覚情報に気をとられてしまうので、耳からの情報をさらに処理しにくくなる……ということもあります。
話を聞かない子どもへの接し方、3つのポイント
多くの場合、子どもは話を聞かないのではなく、聞く力がまだまだ未熟なだけだということが理解できたでしょうか。
それでは、耳からの情報処理が苦手な子に接するときのポイントを見てみましょう。
1.注意をこちらに向ける
まずは子どもに「今から大人が話をするよ」ということをわかってもらう必要があります。
注意をこちらに向けて、よけいな情報が入らないように工夫しましょう。
家庭内では、テレビや音楽などを消す、子どものそばに行って視界に入るところで声をかける、体に触れて注意を促すなどの方法が有効です。
2.視覚情報を使って説明する
大人の話を静かに聞くのが苦手な場合は、視覚情報に訴えながら話をすることもよい方法です。
大事な話をするときは紙とペンを用意してみてください。内容を書き出し、一緒に見たりお互いに書き加えたりしながら話すと、子どもの理解が深まります。
毎日のルーティンとしてやるべきことは、紙に書いて貼っておくのもおすすめです。
話を聞く姿勢は、子どもそれぞれだと理解する
話を聞く姿勢にこだわりすぎると、子どもが肝心な内容を情報処理できないこともあります。
子どものうちは、目を見ていなくても、手いたずらをしていても、大目に見ることも必要ではないでしょうか。
肝心なのは聞く姿勢の正しさではなく「大人の話を理解したかどうか」という点です。
話を聞かない子どもを、ダメな子と判断しないで
話を聞かないのは、子どもの未発達な部分によってうまく情報を処理できていないだけという可能性を理解していただけたのではないでしょうか。
子どもは今成長段階にいますので「話を聞かない」「聴く姿勢がなっていない」などと否定せず、温かく見守ることも大切です。
また子ども自身に「こういう理屈によって、話を聞くのが苦手なんだね」と説明してあげたり、共感してあげたりすることもまた、大事なコミュニケーションになるでしょう。