ある日突然、ドキッとするような言葉遣いを始める子ども。「どこでそんな言葉を覚えてきたの?」と思うことも少なくないはずです。子どもの言葉遣いが悪くなる原因はどこにあるのでしょうか。また、家庭ではどのように対処すればいいのでしょうか。
今回は、子どもの言葉遣いが悪いとき、その原因と正し方について紹介します。
子どもの言葉遣いが悪いのは、親のせい?
子どもの言葉遣いが悪いとき、真っ先に疑われるのが「親の教育」ではないでしょうか。親としても責任を感じることが多いと思いますが、子どもの言葉遣いについては、後述する通り、親だけが原因というわけではありません。
ただ、「親は丁寧な言葉遣いなのに子どもは乱暴」というパターンはあっても、「親の言葉遣いが乱暴なのに子どもは丁寧」ということはほとんどありません。
どうしても、親の言葉遣いが悪いと、子どもの言葉遣いも悪くなってしまいます。親は子どもにとって一番の手本となる存在ですから、良し悪しが分かる前に親の言動を真似するのが当たり前。
言葉遣いに限らず、口癖や動作の癖など、知らない間に子どもが真似をしていてハッ気付かされることがあるはずです。
このように、子どもの言葉遣いが悪いことは必ず親に原因があるわけではありませんが、親や兄弟、祖父母や親戚などの言葉遣いを改めて見直すきっかけにするのは良いことです。
幼稚園や小学校など、集団生活の中で耳にする言葉
子どもは本当に「真似」が上手です。特に幼稚園~小学校低学年の子どもは「ごっこ遊び」が大好き。「幼稚園ごっこ」や「小学校ごっこ」をする中で、担任の先生の日ごろの言動や口癖が丸裸になることも少なくありません。
同じように、集団生活の中で、お友だちからの影響も多く受けます。言葉遣いが乱暴な子がクラスに一人いるだけで、その言葉遣いがクラス全体に広がってしまうことがあります。
この場合は、子ども自身に悪意はなく、単に「耳にした言葉を口に出しただけ」ということが多いでしょう。
ただ、「言葉での攻撃を受け、その防御反応として自分も同じ言葉を使うようになる」ということもあります。子どもに学校での過ごし方について質問するなどして、注意深く見守りましょう。
テレビやゲーム、動画の影響も
近年、テレビ、ゲーム、動画など、子どもがさまざまな情報に触れる機会が増えています。
「親が仕事をしている間に」「ご飯の支度をしている間に」「お留守番をしている間に」など、親の目が直接届かない場面でゲーム機やスマホ、タブレットを使用している子どもも多いのではないでしょうか。
テレビやゲームが完全な悪だとは言いません。子どもの興味を引きだすものや、学習に役立つもの、好奇心をくすぐる内容もあるでしょう。
ただ、特にYoutube等の動画においては、誰の校閲も通さずに個人が自己責任で作成したものばかりです。中には、不適切な内容や乱暴な言葉遣い、暴力的なシーンが含まれている可能性を気にしなければなりません。
「ゲームや動画視聴はリビングで行う」「定期的に閲覧履歴をチェックする」などして、子どもを守りましょう。スマホやタブレットの使用ルール、フィルターのかけ方についても今一度確認が必要です。
次項からは、子どもの言葉遣いが悪くなってしまったときの正し方を紹介します。
「悪い言葉」だと分かって言っているのか見極める
まず重要なのが、子ども自身が「悪い言葉」だと認識しているかどうかです。「他人を傷つける意図があるのか」「言ってはいけない言葉だと分かっているのか」を見極める必要があります。
というのも、先述した通り、特に幼稚園~小学校低学年の子どもは「単に真似をしている」だけの可能性があります。「偶然耳にして覚えた言葉を、家でも言ってみた」「お友だちがこの言葉を言って先生に叱られていた。家で言ったらどうなるの?」という好奇心から口にしているだけかもしれません。
自覚があるかどうかを見極めるには、言葉を口にしている瞬間の表情や態度に注目します。「バツの悪そうな顔をしている」「視線が泳いでいる」「うつむいている」といった場合は、悪いと思いながらも口に出してしまっている状態です。
「ニヤニヤしている」「挑発的な態度を取っている」「言った後すぐに逃げる」などは、悪いと分かっていて、さらに相手を傷付ける意図があるため要注意です。
逆に「裏のない笑顔で言う」「楽しそうに言う」「会話の流れの中で自然に使う」というときには、悪い言葉だという自覚がないことが多いでしょう。
「悪い言葉」だと自覚がないままに使っているときには、簡単な注意で使わなくなるはずです。口癖になってしまう前に正してください。自覚があって使っている場合は、さらに慎重な対応が必要となります。
言ってはいけない言葉を具体的に指摘する
子ども同士の会話の中や、独り言の中で言葉遣いが悪かったら、どう声をかけるでしょうか?「こら!」「その言い方しないで!」「そんな風に言ったらダメでしょ!」など、抽象的な叱り方をしてしまっていたら、ママにも改善の余地があります。特に会話の中で悪い言葉遣いが出てしまう子は、「言っていい言葉」と「言ってはいけない言葉」の区別がついていない場合があります。
その中で抽象的な叱られ方をすると、「なにがダメだったの?」と分からないままになってしまうでしょう。反射的に「ごめんなさい」と謝って、根本的な部分が理解できていないままなので、次の日もまた同じ言葉を言ってしまうのです。
子どもの悪い言葉遣いを正したいときは、「どの言葉がダメなのか」を具体的に教える必要があります。「“バカ”は言ってはいけません」「“こっち来んな”は悪い言い方です」と、きちんと指摘しましょう。
ママ自身も口にしたくない言葉や、耳にすることも嫌な言葉があるかもしれません。しかしまずは「使ってはいけない言葉」を教えることがスタートラインです。
なぜ言ってはいけない言葉なのかを説明する
次に、なぜその言葉を言ってはいけないのか、理由を説明しましょう。悪い言葉遣いというのは、大抵「人を不快にさせる言葉」「人を差別する言葉」です。
そのため、言葉の意味を教え、言われた人がどんな気持ちになるかを一緒に考えます。自分が言われたらどんな気持ちになるか?を考えることができれば、悪い言葉遣いへの認識も改まるはずです。
このとき気を付けなければいけないのは、「話をするタイミング」です。子どもがまだゲームや動画に気を取られている状態では、落ち着いて話ができません。
また、一度叱られたことによって反発心を抱いている状態でも、冷静な話し合いはできないでしょう。「乱暴な言葉を使った瞬間は短く指摘する」ことに留め、「落ち着いて話ができるタイミングでじっくり話し合う」という流れを作ってください。
「言い換えの言葉」を教える
「言ってはいけない言葉」が分かり、「言ってはいけない理由」が理解できても、なかなか改善されないことがあります。そのときは、「言い換えの言葉」を教えましょう。
例えば、「くそー!」と言いたくなったら「くやしいー!」と言う。「あっちいけ!」と言いたくなったら「一人にさせて!」と自分が移動する。などです。
悪い言葉遣いを正そうとするあまり、子どもの感情に蓋をしてしまうのは良くありません。
教えるべきは、感情の正しい発散方法です。大声を出したくなる気持ち、怒りをぶつけたい気持ち、腹が立ってつい相手を傷付けたくなってしまう気持ち、このような感情を、子ども自身が自分で上手くコントロールできるようにサポートする必要があるのです。
過剰に反応し過ぎない
言ってはいけない言葉だと分かっているのに言ってしまう子どもの中には、その言葉を口にした瞬間の大人の反応をおもしろがっている子どもがいます。
特に、「うんち」「おしっこ」「おっぱい」などの下品な言葉を繰り返し言うときは、過剰に反応し過ぎないことが大切です。大人の反応を面白がっているのですから、反応すればするほど「嬉しい」「楽しい」という感情になってしまうからです。
誰かを傷付ける目的でない場合は、「ダメ」「おもしろくないよ」とそっけなく返す程度に留めましょう。それを繰り返すことで、子どもの方から飽きることがほとんどです。
会話を省略しない習慣をつける
「改善」と共に「予防」に対しても効果を発揮するのが、「会話を省略しない習慣」です。
「ねぇ、お茶は?」「今日暑い」など、不十分な言葉に対して「お茶入れてあげようか?」「エアコン強くする?」と過分な対応をすると、子どもはどんどん会話を省略してしまいます。
こういった省略会話は、ママに対しては伝わっても、他の大人や友だちには伝わらないことがほとんどです。そうすると「分かってもらえない」「どうして伝わらないのか」といった怒りやいらだちへつながってしまうでしょう。
省略会話は、言葉遣いだけでなく、コミュニケーション力にも影響を与えます。自分の気持ちをきちんと伝える力を身につけるためにも、「お茶を飲みたいんだけど、どこにある?」「今日は暑いから、エアコンをつけてほしいな」と、省略しない会話を心がけましょう。
悪い言葉や自分の感情との付き合い方を伝えよう
以上、子どもの言葉遣いが悪いとき、その原因と正し方について紹介しました。
子どもは周りの大人やお友だちの影響を受けて成長しますが、近年はそれに加えてテレビ、ゲーム、動画などの影響も強く受けます。
これらの情報をシャットアウトして子どもを守る方法もありますが、大人へ近づくにしたがって難しくなるでしょう。
そのため、「耳にすることはあっても自分は言ってはいけない」「言いたくなったら別の言葉に置き換える」など、上手な付き合い方を教えましょう。「自分が言われて嫌な言葉を、相手に言わない」という基本を忘れないでください。