育児と向き合う

ご褒美のタイミングが「指示待ち子ども」か「自己肯定感の高い子」かを左右する理由

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この記事を書いた人
いしみほ さん【育児コラムライター】

社会福祉学を専攻し、保育士・幼稚園教諭の資格を持つ育児コラムライター。社会福祉学部では「家庭環境ごとの子どもへの支援の必要性」や「北欧各国の福祉と教育」を学んだ知見を活かしコラムを執筆。2人のお子さんを育てながら、執筆の他にハンドメイド作家(タティングレース、イヤリングなど)としても活動中。

「子供が嫌のことを頑張ったらご褒美をあげてもいいの?」

「せっかく頑張ったからあげたいなと思うけど…正しいあげ方ってある?」

「そもそもご褒美って必要なもの?」

子供が習い事で賞を取った時、テストで満点を取った時など親としてたまにはご褒美をあげたいなと思うことってありますよね。

反対に宿題や勉強に対して消極的な時、苦手なことをやろうとしない時などにご褒美を使うか悩むこともあると思います。

ですが、 >ご褒美は一歩間違うと子供の意欲や成長を阻害する可能性があることをご存知でしょうか?今回は子育てにおける「ご褒美」の大切な考え方をご紹介していきます。

好きでやっていることへの「ご褒美」は絶対にNG

最初に忠告させて頂きたいことは子ども自身が「楽しくてやっている」「好きでやっている」ということに対してのご褒美は絶対にあげてはいけません。

これは「好き」や「楽しい」といった子供達の内側から沸きあがる意欲がご褒美によってなくなってしまう危険があるからです。

スタンフォード大学の心理学者、マーク・レッパー博士が行ったお絵かきに関する実験結果がその証明としてよくあげられています。

博士達はある幼稚園でお絵かきが大好きな子供達に「ご褒美」という存在がどう影響するかを下記の方法で調べました。

  1. お絵かきが大好きな子供達をA、B、Cの3つのグループに分ける
  2. Aのグループには「上手に描けた子に賞状を渡します」と言ってからお絵かきを開始してもらい、終わった後に賞状を渡す
  3. Bのグループには賞状のことは伝えずにお絵かきを開始してもらったが、終わった後にサプライズで賞状を渡す
  4. Cのグループには賞状のことは伝えず、お絵かき後も渡さない
  5. それから1~2週間後、同じ子供達の自由時間にお絵かきの道具を置き、その様子を観察する

 
さて、あなたは子供達がどうなったと思いますか?
実は、事前に賞状があると知らされたAのグループの子供達だけが、自由時間にお絵かきを楽しむ時間が他のグループの半分程度に減ってしまったのです。

心の中から湧き上がる意欲を奪う「アンダーマイニング効果」

子供達はお絵かきに何か目標があったわけではありません。ただ純粋に「楽しいから」「好きだから」たくさんの遊びの中からお絵かきを選んで遊んでいました。

ですが賞状(=ご褒美)の登場によって「お絵かきは賞状をもらうためにやらなければならないことだ」とAのグループの子供たちは認識してしまったのです。

そして、その結果「好きだからやる」という気持ちが減退してしまい、実際にお絵かきを楽しむ時間が減ってしまいました。

こうした「楽しい」「好きだ」といった心の内側の意欲や動機づけが、ご褒美や報酬などの外部からの動機づけによって減ってしまう現象を「アンダーマイニング効果」と呼びます。

子供がせっかく楽しく意欲的に取り組んでいることに、うっかり大人が良かれと思ってご褒美をあげるとこんな思いもよらない危険が伴います。ですからご家庭でも、子供が楽しく折り紙をしている時に「上手に折れたからチョコレートあげるね」という行為は絶対にやめましょう。

やりたくないことをご褒美で釣るのはあり?なし?

では、反対に子供が嫌いなこと、例えば勉強や宿題などをさせるためにご褒美をあげるのは良いのでしょうか?

結論から先に言うと答えはNGです。嫌いなことをやらせるためにご褒美をぶら下げることは、子供から考える力を奪ってしまうからです。

例えば、算数が嫌いな子供に計算プリントをやらせるために「プリントができたらご褒美あげるね」と言ったとしましょう。子供はそれをどのように受け取るかというと「何も考えずただやればいい」ということになります。

そこには、目的も意識もなく、プリントをするというのは「ご褒美をもらうための作業」となってしまうのです。

考えることを奪うと「指示待ち人間」が出来上がる

この「何も考えずやればご褒美がもらえる」という状況を続けると「自分に必要なことだからやる」という考え方とはほど遠く「親の指示に従っていればいい」という思考が出来上がってしまいます。

これはいわゆる自分で何事もできない「指示待ち人間」の思考です。

嫌いなことをご褒美でやらせるのは、即効性があるのでその場では子供はある程度取り組みます。ですが、結局は親が指示をしなければやらないというのは根本的には変わらないのです。

嫌いなことをお子さんに取り組ませたい気持ちはとてもよく分かるのですが、
これでいくらお子さんが嫌いなことをやったとしても、その後のお子さんの未来を考えるならあまり良い方策ではないことはお分かり頂けると思います。

嫌いなことを取り組ませるにはお子さんが「どうやったら楽しくなるか」ということを考えてあげることが親としては大切です。

どうせ言葉をかけるなら、ご褒美をぶら下げるのではなく「でもさ、スポーツもできて、勉強もできる男の子の方が女の子からモテると思うよ」といった内側から湧き上がるような言葉がけをしてあげて下さい。

子供へのご褒美は「具体的な賞賛」が一番大切

では、子供へのご褒美で一番大切なことは何かというとそれは「具体的な賞賛の言葉がけをすること」です。

具体的な賞賛とはどういうことかというと、例えば、子供が描いた絵が賞を取ったなら

「あなたが書いた絵のキレイな色使いがとても好き」
「他の絵とは違う方向から描いたその視点が素晴らしい」
どの点が良いと思ったか」具体的に伝えるのです。

サッカーの試合に勝ったなら「あなたがあの場面でしっかり敵を抑えたから、得点に繋がった」「あの場面のあなたのパスが味方のチャンスを作った」と子供の動きや考えてやったであろうことを具体的に伝えます。

そして「あなたはお母さんの自慢の娘よ」「まるでとんびが鷹を産んだようだ!お前は本当に素晴らしい」と子供を思いきり褒めてあげて下さい。

結果よりも努力を褒めることで自己肯定力を高める

はっきりとした結果にフォーカスした褒め言葉よりも、子供が何を考え、工夫し、努力したかということを褒めることが賞賛する上では一番大切です。
なぜなら、努力したこと、工夫したことを褒められれば、結果が悪い時も子供は自分にOKを出すことができるからです。そして、子供は結果よりも目的に向かって頑張ることが大切なことをしっかりと理解することができます。
こうして、良かった時だけでなく悪かった時も、自分が頑張ったことを認めることができれば、子供の自己肯定力も高まります。
親が与えるべきご褒美というのは、こうした子供が自分を好きになれる力=自己肯定力を身につけてあげることなのです。

サプライズで渡せば「ご褒美目的」にはならない

とはいっても、子供がものすごく頑張った時って親も感動しますし、毎日毎日努力している姿を見ていると、その努力が実った時は物をプレゼントしたい時もありますよね。

子供に何か物をプレゼントしたい時は、一つだけ守って頂きたいルールがあります。それは、事前に子供には伝えずに「サプライズで渡すこと」です。

先ほどご紹介したスタンフォード大学のお絵かきの実験でも、事前に賞状のことを伝えなかった子供達はお絵かきに対する意欲は失われませんでした。つまり、ご褒美となる物の存在を知らなければ、ご褒美が目的となるアンダーマイニング効果は起きないのです。

ですから、お子さんの意欲や考える力をそのままに、親も自分の感動を伝えるなら、サプライズでするという点だけは守るようにして下さい。

親子の絆を深める「特別な時間」というご褒美

また、物以外のご褒美でおすすめなのが家族と絆を深めるような「特別な時間を過ごす」ことをプレゼントすることです。

例えば、次の休みに子供が大好きなキャンプに行ったり、行きたいと言っていたテーマパークに遊びに行ったり、スポーツが好きなら実際に観戦しに行ったりというのがおすすめです。

ご家庭の方針ともご相談ではありますが、お菓子をたっぷり広げて夜に好きな映画を借りてきて家族で観賞する、家族で思いきりテレビゲームを楽しむといったことも子供にとっては「特別な時間」になると思います。

さらに、物としてプレゼントしたものにそうした時間をプラスするという方法もあります。具体的には、新しい自転車をプレゼントして「次の休みにサイクリングに行こうな!」と約束したり、新しいお絵かき道具をプレゼントして「今度は一緒に外に絵を描きに行こうよ」と誘ったりすることです。

こうすれば、ご褒美という存在が家族の時間を作り、絆を深めてくれることに一役買ってくれますのでぜひ試してみて下さい。

子供が求めているご褒美は「自分を認めてくれる言葉」

いかがでしたか?子供が何かを頑張った時、つい何かをあげたくなってしまう気持ちは私も親ですからとてもよく分かります。ですが、どうせご褒美をあげるなら、もう一歩踏み込んで「子供の自己肯定感を高める」ということを意識して頂きたいのです。

「SING」(シング)という映画をご存知でしょうか?色んな逆境やコンプレックスを持った動物達が、歌のコンテストに出場するために努力することで、自分に自信を取り戻していくという子供向けの映画です。

その中で出てくるゴリラの親子がいるのですが、息子が困難を乗り越えてステージに立ち、素晴らしい歌声を披露した後、いつもはものすごく怖い父親のゴリラが息子をグッと抱きしめ「お前は私の誇りだ」と言うシーンがあります。

子供はこの父親のゴリラのように、この記事を読んでくださっているお母さんやお父さんに「あなたの努力はいつも見ているよ」「あなたはとても素晴らしい人間だよ」と自分を認めてくれる言葉をかけてもらえることが何より嬉しいのです。ですから、何かご褒美をあげたいと思うようなことがあれば、何よりもまず子供をしっかり褒めてあげて下さいね。

▼家庭にあった子育てを考えるヒント

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