育児と向き合う

放任主義で子どもを危険から守れる親と守れない親

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この記事を書いた人
夏野 新さん【心理カウンセラー】

虐待防止や家庭環境についての専門家。心理カウンセラーの資格を活かしながら「妊娠、出産、育児」といった女性向けのサポートをするための情報を発信しています。2児の子どもを育てながら、2019年には自身の書籍「世界が変わる! アダルトチルドレンの自己観測」を出版し、悩みを抱えるご家庭への問題解決に尽力しています。

現代の子育て現場では「放任主義」によくないイメージをもっている方は少なくありません。「主義」という言葉を使うと、完全に親が子どもに関与しないポリシーのように感じられますよね。

しかし、放任主義とまではいかなくても「放任を心掛ける」ことは子どもの自主性や主体性を育てます。

一方で、単純にほったらかしの育児でいいわけがないことは、多くの方が理解していることでしょう。

そこで、放任主義で子どもを危険から守れる親と、そうでない親の違いについて考えてみましょう。

「民主主義」と「放任主義」のベストバランスで子どもを育てる

子育てにおいて、もっとも最適なバランスは「民主主義」と「放任主義」をうまく使い分けるかたちだとされます。

ダイアナ・バウムリンドというアメリカの発達心理学者は、もっとも健やかな育児方法は民主型であるという研究結果を提示しています。

子育ての民主主義とは?

民主主義の子育てとは、子どもの要求には適度に応じ、協力的であること。また子どもに対して敬意を払いながら接します。

それだけではなく、時に厳しく家庭内でのルールや社会秩序などを教えるという、バランスのとれた子育て方法です。

ただしこれは、親自身がこのようなバランスの良い育てられ方をしていない場合や、性格特性などによって困難になることも多く、完璧な民主主義育児をすることは難しいのが実際です。

放任主義も実は大事な要素

そこで大切になるのが、若干の放任主義を加えること。完全なる放任主義ではなく、ある程度子どもの自己解決能力や判断力に任せて放っておくことも必要になります。

2児の母である私個人としても、放任主義を適度な匙加減で使うことは、親の負担やストレスを軽減する効果もあると感じています。

もちろん、民主主義の子育てを親自身が追及して試行錯誤することも必要です。

ただ、理想の子育て像に苦しめられて、がんじがらめになるという危険性もあります。適度に力を抜くことや、無理なことを頑張ってやりすぎない「ゆるさ」を加えることも必要なのです。

放任主義で子どもを危険から守れるの?

放任主義と聞くと「それでは子どもを危険から守ることができない」「愛情不足になるのではないか」などと不安になる方も多いはずです。

そこで「放任主義」と「無関心」の違いをはっきりさせておきましょう。

放任主義と無関心の違い

放任主義は、あくまでも「子どもを信頼して任せる」という子育てポリシーです。ただ、多くの方が放任と無関心の違いを理解していないのではないでしょうか。

放任主義は、ある程度放っておくことや子どもに任せる選択が、子ども自身の考える力や行動する力を育てることを知った上で行う育児方針です。

しかし、無関心な育児は親自身が子育てに積極的になれず、あきらめている状態といえます。

放任主義はよくないと感じてしまう場合は、自分が子どもの自主性を信じられるかどうか、もしくは子どもに今その力があるかどうか、という部分に目を向けて見るとよいでしょう。

放任主義では子どもを危険から守れないのでは?

子どもの自主性に任せたい気持ちはあっても、もし危険な目に遭ったり事故や犯罪に巻き込まれたりするようなことがあったら……という不安はどんな親でも持っているはずですよね。

大切なのは「子どもに今どの程度の判断能力があるか」という部分を見極めることです。当然ながら、まだまだ判断力や経験の少ない幼児から目を離すのは危険です。

ひとりで出かけさせたり、留守番をさせたりといった親の目が行き届かない場所で自主行動をさせるのは推奨できません。

公園で遊ばせる際にも、親はなるべく目の届く場所で過ごすことが大事です。

親の監督なしで自由に行動するのは、自分で登下校できるようになる小学校1年生以降からとするのが一般的です。

ただ、同じ年齢の子どもでも、その子どもや家庭の生活スタイルによって子どもがどの程度自分で判断し、行動できるかは異なります。

日常的に親は子どもの様子や能力をしっかりと見て「任せられる」「信頼できる」という決断を下すという順を追ったプロセスが大事なのではないでしょうか。

親に不安が伴う場合は、手助けできる状態で任せてみる、段階的に挑戦させるといった順序を経て、徐々に手を放していくのが理想的です。

危険から完全に子どもを守れる親はいない

子どもからは段階的に手を離し、徐々に放任主義を取り入れていくのがよいわけですが、それと同時に「どんな危険からも、完全に子どもを守れる親はいない」ことも頭に入れておかなければならないと感じます。

子どもに限らず、大人でも事故や犯罪被害に遭う危険性は常に隣り合わせです。危険なことやスリルを伴うな遊びをしたがるのが、子どもの発達を促すこともあります。

その中で「すべては親の責任である」という考えが強すぎると、いつまでたっても子どもから手を離すことができません。

現代では、どんなことも「なぜ親が目を離したのか?」「こんな事故が起こるのは親の監督不行き届きでは?」といった批評が飛び交うことも多いです。

しかし、人間が生きている以上常に隣り合わせであることをしっかり念頭に置くことも、子育てをする上で非常に大切な考え方であると私は考えています。

放任主義の本質をしっかりと考えて子どもと向き合う

放任主義は、あくまでも「子どもの判断力を見定めて、信頼する」ことです。めんどうだから子どもをほったらかしにするという無関心な育児とは全く違うものであるという認識をしていきましょう。

子どもが今どの程度の判断能力があるかは、親が子どもと一緒にさまざまな経験をし、親自身が丁寧に指導しながら見定めていく必要があります。

時にその見誤りはあるかもしれませんが、どんな子どもも、そして大人である自分自身も、危険とは常に隣り合わせであることをどれほど自覚しているか、ということも一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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